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基盤地図情報の概要と1mメッシュ(標高)の提供範囲
2025年3月31日、国土地理院は基盤地図情報(数値標高モデル)のデータのうち、「1mメッシュ(標高)」の提供範囲を大幅に拡大した。
基盤地図情報とは、電子地図において位置の基準となる情報のことで、2007年に成立した「地理空間情報活用推進基本法」に基づいて整備が開始された。
地理空間情報は、国や自治体、民間企業など多様な主体がそれぞれの目的に応じて整備しているが、これらの情報を重ね合わせたり統合したりする際にズレが生じないよう、共通の基準を設けることで効率的な活用が可能となる。
基盤地図情報は、国土地理院のウェブサイト「基盤地図情報ダウンロードサービス」から無償でダウンロードでき、大きく分けて以下の3種類のデータが提供されている。
- 基盤地図情報(基本項目)
- 基盤地図情報(数値標高モデル)
- 基盤地図情報(ジオイド・モデル/基準面補正パラメータ)
このうち今回提供範囲を拡大したのは、航空レーザー測量のデータをもとに作成された「基盤地図情報(数値標高モデル)」である。
数値標高モデルは地形の起伏を詳細に表現することが可能であり、浸水被害の予測や土砂災害の危険性調査、まちづくりなど、さまざまな分野で活用されている。2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害においては、盛土前・盛土後・発災後のデータを比較することで、標高の変化を調査できたという。
1mメッシュ(標高)の提供範囲
提供範囲を拡大する地域
数値標高モデルは標高のメッシュデータであり、以下の3種類がある。
- 1mメッシュ(標高)
- 5mメッシュ(標高)
- 10mメッシュ(標高)
最も高解像度である1mメッシュ(標高)の提供範囲は、これまで北海道の一部、東北の太平洋沿岸、山口県や千葉県の一部など、全国の3次メッシュの約4%に限られていた。
今回新たに提供を開始した範囲には、滋賀県・広島県・長崎県の全域に加え、静岡県・高知県・愛媛県の大部分の区域および能登半島が含まれており、対象となる3次メッシュの割合は約46%に拡大した。なお、令和6年能登半島地震の被災地である能登半島については、地震後に計測されたデータを用いている。
また、国土地理院は2025年4月1日より、電子基準点、三角点、水準点などの標高成果を、衛星測位を基盤とする最新の値「測地成果2024」に改定した。(報道発表資料:全国の基準点の標高成果の改定について)
今回提供を開始した1mメッシュ(標高)は、標高成果改定前のものであり、改定を反映した新たな成果は2025年7月末に提供される予定である。
それまでに標高改定を反映した数値標高モデルを利用したい場合には、2025年4月1日に公開された「基盤地図情報等パラメータ補正ツール」を使用することで、標高改定後の値に補正できる。
1mメッシュ(標高)のダウンロード方法
1mメッシュ(標高)のデータをダウンロードするには、基盤地図情報ダウンロードサービスでユーザー登録(無料)を行う必要がある。
登録後、基盤地図情報の枠中にある「数値標高モデル」のリンクをクリックすると、地図画面へ遷移する。左側メニューで、1mメッシュの「1A(航空レーザ測量)」にチェックを入れて作成年月を指定すると、ダウンロード可能なメッシュが地図上に表示される。
グレー以外の白いエリアをクリックして選択すると、地図の下にファイル名のリストが表示される。ダウンロードしたいファイルを「追加」すると、ダウンロードリストに登録される。ダウンロードリストのタブに切り替え、右下の「ダウンロード等へ」ボタンをクリックすると、ファイルをダウンロードできる。
数値標高モデルのファイル形式はXMLであり、国土地理院はこの形式のデータを可視化するためのツールとして「基盤地図情報ビューア」を提供している。ダウンロードした1mメッシュのファイルを展開し、「基盤地図情報ビューア」で読み込むと地形が可視化される。
基盤地図情報ダウンロードサービス
基盤地図情報ビューアで1mメッシュ(標高)のデータを表示
2025年度中に提供範囲をさらに拡大
国土地理院は、2025年度中に新たな提供範囲の追加を予定している。追加が予定されている地域は、以下のとおりである。
- 宮城県
- 栃木県
- 東京都(23区)
- 京都府
- 岡山県
- 香川県
1mメッシュ(標高)は、5mメッシュ(標高)と比べて標高点の密度が25倍と高く、地形の細かな起伏まで表現できるため、より精度の高いシミュレーションが可能になる。
今後も提供範囲のさらなる拡大が期待される。
GISソフト「SIS」は基盤地図情報をはじめ約300種類の地図データを変換することなく直接読み込むことができます。
<参考>国土地理院ウェブサイト