目次
空間IDの概要
空間IDとは、3次元空間内で位置を特定するための共通規格であり、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)が事務局として策定を進めている。
空間IDでは、3次元空間を格子単位に切り分けた“ボクセル”に空間IDを付与して参照可能にすることで、3次元空間情報の基盤として統一し、さまざまな事業者がIDに紐付けられたデータを効率的に活用できるようにすることを目指している。
人間が読み取るための地理空間情報は情報量が多いため、ボクセルとして単純化することでドローンやロボットにおける高速処理を実現できる。
空間IDを検索キーとして利用することで、ナビゲーションや配送、AR(拡張現実)、シミュレーションを行う際、異なる基準の地理空間情報でもスムーズに検索・活用できる。
空間IDは建物や地形、樹木、電線などの静的情報だけでなく、気象情報のような動的情報にも対応する。例えばドローンやUGV(無人地上車両)による配送中に、降雨エリアを避けて移動させることができる。
空間IDの概要
(画像出典:https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/9f4e70e2-2335-4181-8293-258c12549d31/df4f46e8/20220927_policies_mobility_report_03.pdf)
空間IDの仕様
空間IDの仕様では、ボクセルを配置する高さの基準面としてジオイド面を採用し、高さ情報(標高)をそのまま紐付けられるようにしている。
空間の分割方式は、国土地理院が提供する地図データ「地理院タイル」と同じ方式でデータの紐付けを行い、ウェブ地図サービスや地図アプリで普及しているXYZタイル方式で運用する方針である。
空間IDの検討会は発足当初、「3次元空間情報基盤アーキテクチャ検討会」という名称であったが、2023年8月の第7回会議から「4次元時空間情報基盤アーキテクチャ検討会」に改名された。
これは3次元空間情報に時間の概念を追加したことによるもので、地物や事象データが持つ時間情報を空間IDに関連付けることにより、空間IDと時間を用いた管理や検索が可能になる。(例:人流データの変化を時間ごとに分析する。)
空間IDのユースケース
空間IDの活用事例として、以下のようなユースケースが考えられる。
ドローン運航管理
建物や鉄塔、電線などドローン飛行の障害となる地物の3次元形状データを3次元空間の占有情報に変換し、ドローンの飛行計画作成に活用できる。
また、気象情報や規制情報、電波情報、人流情報などの動的情報を組み合わせることで、安全かつ効率的な運行が可能となる。
ナビゲーション
空間IDおよびボクセルを活用することにより、静的・動的データと運行管理システムを連携させたナビゲーションが可能となる。
自律移動モビリティや配送ロボットの効率的な運行が可能となり、屋外だけでなく屋内でもシームレスな移動支援が実現する。
インフラ管理
空間IDおよびボクセルを活用することで、さまざまなインフラ施設を効率的に管理できる。
地上施設だけでなく地下空間にも空間IDを活用でき、埋設物の照会漏れや掘削工事時の事故防止、掘削結果の記録などにも役立つ。管理事業者間でインフラ管理の状況を共有し相互活用することも容易になる。
検討会の進捗状況
空間IDの検討プロジェクトは現在第4期に入っており、2024年10月16日には「第9回 4次元時空間情報基盤アーキテクチャ検討会」が行われ、以下のような項目が検討されている。(第9回検討会の資料はこちら)
- 限定範囲として定義される「ローカル空間ID」
- 時間軸
- データを統一構造化フォーマットで扱うための概念データモデルの定義
- リスク評価の参考値となるリスク指標値
- 空間IDで扱う情報種別の拡充
2024年3月21日には「4次元時空間情報利活用のための空間IDガイドライン(1.0 beta版)」(旧「4次元時空間情報基盤ガイドライン」)が公開された。
同ガイドラインでは、空間IDおよび4次元時空間情報の活用についてユースケースを例示しながら運用・技術仕様を指針として示しており、4次元時空間情報を活用したユースケースが社会に普及することを目指している。
<参考>経済産業省ウェブサイト、デジタル庁ウェブサイト