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カメラの絞り値の謎解き|なぜ中途半端な5.6なのか?

シャッタースピードと絞り

デジカメは性能が良くなってカンタンで綺麗に撮れます。オート撮影の機能のおかげです。それがオートモードです。露出(シャッタースピード、絞り、ISO感度)からWBまで全てカメラが決めてくれるので簡単に撮影できます。

これ以外にプログラムモード、シャッタースピード優先モード、絞り優先モード、そしてマニュアルモードがあります。それぞれシャッタースピードと絞りの設定が異なります。

カメラはレンズを通して光をセンサーに取り込むことで映像を記録します。光の量を調節する仕組みは大きく2つあります。

1つがシャッタースピード。1/60という表示は1/60秒間だけシャッターを開けることを意味しています。被写体が高速で動く場合にはシャッタースピードを1/1000秒のように小さくすることできれいに撮影することができます。

もう1つが絞り。図のように絞りを調節することで光の量を調節します。F8、F5.6は絞り値のことで、この数値は大きくなるほど絞り穴の直径が小さくなり光の量も小さくなります。

絞り値5.6という中途半端な値はどこからきているのでしょうか。その謎解きをしてみます。

シャッタースピードと絞りの1段階調節の意味

シャッタースピードと絞りは、1段階の調節で光の量を2倍もしくは半分になることがポイントです。シャッタースピードはわかりやすいです。1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125、1/250の単位は秒です。

1段階だけ時間を小さくすれば(1/30秒から1/60秒)シャッターが開いている時間は半分になり光の量も半分になり、逆に1段階だけ時間を大きくすれば(1/30秒から1/15秒)シャッターが開いている時間は2倍になり光の量も2倍になります。

絞り値1.4は√2のこと

絞り値1.4の正体は√2=1.41421356…です。すなわち、1.41421356…×1.41421356…=2となる数のことです。

次のように絞り値は、1からはじめて√2=1.4…をかけた小数第1位までの数値となっています。

シャッタースピードの場合と同じく、絞り1段階の調節で光の量は2倍もしくは半分になります。

絞り値は絞り穴の大きさ(直径)に反比例する

絞り値は、絞り穴の大きさ(直径)に反比例の関係にあります。絞り値が2倍、3倍とすれば、絞り穴の大きさ(直径)は1/2倍、1/3倍になるということです。

絞り穴の面積は光の量に比例します。絞り穴の面積は絞り穴の半径の2乗に円周率πをかけた値になり、絞り穴の直径と半径は比例の関係にあることから、絞り穴の面積は、絞り穴の直径の2乗に比例します。

つまり絞り穴の直径が2倍になると、その半径も2倍になり絞り穴の面積は2の2乗で4倍になります。

絞りを1段階上げる、つまり絞り値を√2倍すると、絞り穴の直径は反比例するので1/√2倍になります。すると、絞り穴の面積は、絞り穴の直径の2乗に比例するので1/√2×1/√2=1/2倍になります。つまり、光の量も1/2倍になります。

ぜひご自身のデジカメの絞り値を見て、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22という数値が順に√2=約1.4倍になっていることを確認してみましょう。絞りの意味がより一段とわかると思います。

 

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桜井進(さくらいすすむ)様

1968年山形県生まれ。 サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。 (略歴) 東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。 理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。 高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。 公益財団法人 中央教育研究所 理事。 国土地理院研究評価委員会委員。 2000年にサイエンスナビゲーターを名乗り、数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。 子どもから大人までを対象とした講演会は年間70回以上。 全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など様々なメディアに出演。 著書に『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。 サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。

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