国土交通省は、不動産取引の際に参考となる情報を地図上で可視化できるWebGISシステム「不動産情報ライブラリ」の運用を2024年4月1日から開始した。
※報道発表の内容はこちら
今回は、この不動産情報ライブラリに搭載されているさまざまな機能を紹介する。
目次
不動産情報ライブラリの概要
不動産情報ライブラリは、不動産に関するさまざまな情報(例:価格、周辺施設、防災、都市計画の情報)を集約し、地図上で重ね合わせて表示できるWebGISシステムである。
利用にあたってアプリのインストールは不要で、誰でもPC、スマートフォン、タブレットから無料で閲覧できる。
国土交通省の発表によると、不動産取引の際に消費者が参考にする価格情報や周辺の公共施設・学区、防災関連の情報の多くは国や地方自治体からウェブサイトを通じて提供されているが、主体ごとに形式がバラバラなため、情報を一元的に把握しづらい状況となっている。
そのため、円滑な取引や情報の利活用促進の観点から、不動産に関するオープンデータを利用者のニーズに応じて地図上にわかりやすく表示できるよう不動産情報ライブラリを構築したという。
不動産情報ライブラリは、2022年12月に閣議決定した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」や、同年3月に閣議決定した「地理空間情報活用推進基本計画」、2021年5月に閣議決定した「土地基本方針」などの政府計画に記載されている。
デジ田総合戦略には、不動産情報ライブラリを構築することで、不動産市場における情報の非対称性の解消促進に向けた環境整備を図る旨も記されている。
不動産情報ライブラリ [1]
提供されている情報
不動産情報ライブラリでは以下の情報が提供されている。
- 価格情報
地価公示、都道府県地価調査、不動産取引価格情報、成約価格情報 - 地形情報
陰影起伏図、土地条件図(数値地図25000)、大規模盛土造成マップ - 防災情報
洪水浸水想定区域(想定最大規模)、津波浸水想定、高潮浸水想定区域、避難施設、災害危険区域、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止地区 - 周辺施設情報
保育園・幼稚園等、小学校区、中学校区、学校、医療機関、福祉移設、自然公園地域、市区町村村役場等及び集会施設、図書館 - 都市計画情報
都市計画区域、区域区分、用途地域、立地適正化計画区域、防火・準防火地域、高度利用地区、地区計画 - 人口情報等
将来推計人口500mメッシュ、国税調査(500mメッシュ 人口)、駅別乗降客数
上記の中でも不動産取引で特に注目される価格情報については、以下の情報が掲載されている。
- 国土交通省土地鑑定委員会が公示する「地価公示」
- 都道府県が公表する「地価調査」
- 不動産取引当事者へのアンケート調査をもとに情報を蓄積してまとめた「不動産取引価格情報」
- 指定流通機構(レインズ)保有の不動産取引価格情報をもとに個別の取引が特定できないように加工した「成約価格情報」
不動産取引に関する情報だけでなく、ハザードマップや避難場所、災害危険区域といった防災情報や、将来推計・駅別乗降客数など土地選びの際に参考となる情報も提供されている。
背景地図の切り替えが可能
不動産情報ライブラリの背景地図は、ゼンリン地図と地理院タイルを切り替え可能となっており、デフォルトではゼンリン地図が表示される。
ゼンリン地図は、小縮尺~中縮尺ではさまざまな施設(例:公共施設、鉄道駅、駐車場、病院、学校、ホテル、コンビニ、ガソリンスタンド、銀行、寺社)がアイコン表示され、コンビニなどはブランドロゴが使われているので街の様子がわかりやすい。
ズームレベルを上げるとアイコンは消えて建物名が細かく表示され、番地を表す数字が大きく表示される。上部の「画面中心の街区を表示」ボタンを押すと街区の区切り線が表示されるのも便利だ。
地理院タイルはコンビニなど商業施設の情報が少なく、街区の区切りもわかりづらいので、地理院タイルと切り替えながら使うことで足りない情報を補えるように配慮されている。
地形情報や防災情報は、表示された枠線の塗りつぶしをするかどうかを選択できるので便利だ。
価格情報は用途区分や不動産の種類によって表示条件を細かく設定できるので、自分の知りたい情報だけをピックアップして可視化できる。
地価公示価格は、詳細情報や過去の価格推移を示したグラフも別ウインドウで表示される。
地価公示価格 [2]
洪水浸水想定区域(想定最大規模)[3]
駅別乗降客数 [4]
価格情報データのダウンロードも可能
不動産情報ライブラリでは、地図上に情報を可視化させるだけでなく、価格情報のデータをダウンロードすることもできる。
地域や価格情報の区分、不動産の種類、時期を指定すればCSVファイルを取得できるので、ビジネスや研究の資料として幅広い用途に利用できる。
国土交通省が公表している土地取引価格の基本統計量(例:土地面積あたり単価の平均値)も地域ごとに表とグラフで調べられる。
APIでも無償公開
不動産情報ライブラリの情報はAPIでも無償公開されるので、APIを組み込めば公開情報とユーザーが保有している情報を地図上に重ね合わせて表示することができる。
APIの利用を希望する場合は、同サイトの申請ページから申し込めばキーが発行される。
国土交通省は、今後利用者アンケートを通じてユーザーニーズを把握し、より利便性の高いシステムとなるように掲載情報の追加・変更を検討する予定だ。
地理院タイルだけでなくゼンリン地図も背景地図として使える不動産情報ライブラリは、不動産取引を行う際の参考情報として不動産事業者や一般ユーザーに広く役立つサイトである。
今後はAPIを利用した開発が進み、さまざまなサービスが登場することが予想される。
※取引価格を掲載していた「土地総合情報システム」は令和6年3月末で廃止となった。
■URL
不動産情報ライブラリ
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
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インフォマティクスの不動産事業者向けサービスは、不動産業者が保有する「場所に関する情報」を地図上に集約し、ブラウザ越しに事業所内外で情報共有できる地図サービスです。
表示条件を設定して検索すると、該当物件が地図上に表示 [5]
物件に関するさまざまな情報をリンクさせて一括管理できるほか、現地で入力した調査データを即時共有することもできるので、問い合わせ対応の迅速化や業務効率向上に役立ちます。
今回ご紹介した不動産情報ライブラリから提供されているAPIの組込やオープンデータを活用した地図サービスの構築などのご要望がありましたらぜひご相談ください。
資料請求もしていただけますので、お気軽にお問い合わせください。
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<参考>国土交通省ウェブサイト、不動産ライブラリサイト
<画像出典>[1]~[4] 不動産ライブラリサイト
<地図出典>[5] 国土地理院 地理院地図(淡水地図)