コラム 時空の旅人

黄金比とは? 美しいと感じる比率「1.618」を解説

こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
今回は空間を居心地良くするもの、美しく見せるもの「黄金比」への旅です。

美しいものにはヒミツの数字が隠されている

写真は、目の前にある時空間の情報を切り取ったもの、と言えます。

美しい風景に出会って思わずシャッターを切ったとき、デジタルカメラやスマホなら、その場ですぐに画像を確認することが多いですよね。うまく撮れたと満足することもあれば、何となく気に入らなくて、もう一度撮り直すこともあるでしょう。

今回の旅の出発点は、まさにそんな日常のワンシーンです。私たちはなぜ、写真のほんのわずかな違いに対して「なんとなく心地いい」「なんだか落ち着かない」と感じるのでしょうか。

美しいと感じさせるもの

まず下の2枚の写真をご覧ください。

これは、最初に撮影した「写真A」が何となく気に入らず、少しアングルを変えて撮り直した「写真B」を良しとしたものです。いったい何が、その印象の違いを生み出したのでしょうか。

A

写真 A

B

写真 B

「花が多く写っているAが好き」という人や、「真正面にどっしり富士山がある方が雄大で良い」という人もいるかもしれません。しかし、写真構図のセオリーでいえば、Bの方が圧倒的に教科書的であり、見ていて不思議と落ち着きます。実際、周りの人にどちらが落ち着くか尋ねてみると、9割以上がBと答えました。

間違い探しのようなほんの微妙な違いなのに、なぜこれほど印象が変わるのでしょうか。

タネ明かしをすると、Bの写真は富士山の頂上の位置が、ほんの少しだけ右下に寄っている。ただそれだけです。

富士山の頂上の位置を見てみると、Aでは写真の真ん中(1:1)にあるのに対し、Bでは1 : 1.6の位置にあります。また、この写真では手前の花畑がベース(土台)の役目を果たしていますが、写真の上端から花畑の上端までの比率を比べると、Aでは半々なのに対し、Bでは1 : 1.62になっているのです。

黄金比とは

この「1.6」や「1.62」という数字にピンときた方は、かなりの数学マニアか美術関係の方かもしれません。

そう、これこそが世に言う「黄金比(1 : 1.618)」の構図なのです。

黄金比とは、自然界に広く存在する「調和の比率」であり、人間が本能的に最も美しい、あるいは安定していると感じる究極のバランスを指します。

古代ギリシャのパルテノン神殿やミロのヴィーナスをはじめ、歴史的に美しいと称賛される芸術や建築物に多用されていることで有名です。現代でも、企業のロゴデザインやWEBサイトのレイアウトを美しく整えるための基本形として欠かせないものとなっています。

身近なところでは、名刺やタバコの箱の縦横比、クレジットカード、テレビやポータブルプレイヤーの画面比率などにも黄金比が隠れています。しかし、この魔法の比率が最も多く存在している場所は、実は自然界なのです。

植物が生きていくのに必要

今度は、1輪の花をじっくりと眺めてみましょう。

散歩の途中に見かけた美しい花。その絶妙なグラデーションに目を奪われますが、それ以上に私たちを惹きつけるのは「花びらの並び方」です。何枚もの花びらが幾重にも重なり合っているのに、お互いを決して邪魔していない見事な配置。これぞまさに、自然の神秘です。

実は、この花びらの並び方こそ黄金比なのです。
植物が太陽の光を満遍なく浴びて生きていくためには、上の葉や花びらが、下の葉や花びらを隠してはいけません。そこで植物は、360度を黄金比で割った「137.5度」という絶妙な角度(黄金角)を保ちながら、少しずつずらして花びらや枝を展開させているのです。こうすることで、すべてのパーツが重なることなく、効率よく陽の光を受け取ることができます。

自然界の仕掛けはこれだけではありません。
人間の身体を見ても、「身長とへそ下の長さの比」「手の先から肩までと、肘から先までの比」、さらには生命の設計図である「DNAの螺旋の1単位の長さと直径」にまで、黄金比が組み込まれています。

黄金比は古くから「神の比」とも呼ばれてきましたが、それは単に見た目が美しいからではなく、この世の生命が効率よく生き、存在するために必要不可欠な比率だったのです。だからこそ、私たちはその持続可能なバランスに対して、本能のレベルで「美しい」「安心する」と感じるように、DNAに刻み込まれているのでしょう。

冒頭1枚目の富士山の写真では、なんとなく落ち着かないと感じて微調整した結果、無意識のうちに黄金比の構図(写真B)を導き出していたのですから、人間の感性も案外あなどれません。

ITの世界にも存在する魔法の数字

「現代のIT社会を生きる我々は、美しさ(感性)よりも利便性(テクノロジー)を追求すべきではないか。空間デザインにおける黄金比なんて、ただの飾りにすぎないのではないか」

そう考える方もいるかもしれません。しかし、黄金比の力はテクノロジーの世界でも証明されています。

たとえば、コンピュータがデータを検索する際のアルゴリズム(黄金分割探索)や、地下に埋設された水道管の漏水箇所を特定する手順などにも、この比率が応用されています。膨大なデータを単純に2分割(半分ずつ)して探していくよりも、黄金比の比率で分割して探していく方が、より少ないステップで素早く目的にたどり着けるというのです。

また、複雑なデータの関係性を図示する際、1つの原点から引き出し線を順に伸ばしていくときにも、あの植物の知恵(137.5度)を使えば、線同士が重なることなく、すっきりと美しい図を作り出すことができます。

自然界が命を繋ぎ、バランスを保つために生み出した黄金比。それは、私たちが生きる現代の空間デザインやテクノロジーにとっても必須の要素なのです。

平面の写真から立体的な宇宙の法則まで、この世界にはいたるところに「1.618」という魔法の数字がちりばめられています。私たちが美しい景色に出会ってホッとした気持ちになるとき、私たちの脳は、自然が持つ大いなる調和と対話しているのかもしれません。

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空間情報クラブ編集部

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