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関数電卓入門 その3|関数電卓で20.5を計算してみよう

マイ関数電卓コレクション#1(小6、1979年) SHARP EL-514
(筆者私物)

指数=回数

前回「関数電卓で2¹⁰⁰を計算してみよう」では、関数電卓を使いながら、出力1.2676506×10³⁰は科学的表記法と呼ばれることや関数電卓の計算の限界について取り上げました。

今回も引き続き関数電卓のべき乗計算です。2¹⁰⁰のようにべき乗の指数が自然数の場合は、「指数=回数」です。連載「なぜ0乗は1なのか?その理由を解説《後編》」でも解説したように、1に対して底を何回かけ算したかその回数が指数です。

20.5を関数電卓で計算してみると…

それでは20.5のような指数が小数の場合のべき乗はどのように考えればよいのでしょうか。関数電卓とともにみていきます。通常、回数は自然数です。回数が0.5回とは理解に苦しみます。

わかりやすい例として20.5を関数電卓で計算してみましょう。はたして1.4142135623が返ってきます。これは√2の値のようです。底を変えてみます。30.5は1.7320508075で√3。40.5は2で√4。そして、50.5は2.2360679774で√5。正の数をxとおけば、 x0.5=√x が成りたちます。なぜこうなるのか、それが今回の主題です。

指数法則の出番

べき乗を考える際に「指数=回数」の考え方を一旦脇に置いて違う視点を導入します。それは指数法則です。

問題1 2³×2²
問題2 2³の2乗
問題3 2²の4乗

次のように計算できます。
問題1 2³×2²=(2×2×2)×(2×2)= 2⁵=32
問題2 (2³)²=2³×2³=(2×2×2)×(2×2×2)=2⁶=64
問題3 (2²)⁴=2²×2²×2²×2²=(2×2)×(2×2)×(2×2)×(2×2)=2⁸=256

すると、この計算の中から
問題1 2³×2²=23+2
問題2 (2³)²=2³×²
問題3 (2²)⁴=2²×⁴
という指数の関係がみえてきます。これが指数法則の“はじまり”です。xとyの範囲が自然数であることが“はじまり”で、0、負の整数、有理数、無理数すなわち実数まで拡張することが証明されます。実は複素数まで拡張できます。

20.5=√2の謎解き

これで、20.5=√2の謎解きの準備ができました。20.5の2乗を考えます。指数法則(2)においてa=2、x=0.5、y=2とすると次が成り立ちます。
(20.5)²=20.5×2=2¹=2
20.5という数は、2乗したら2になる数です。ところで2乗したら2になる数とは√2=1.41421356…に他なりません。つまり、20.5=√2 です。

問題を考えてみる

せっかく関数電卓でべき乗の計算をしてみたので、何か興味ある問題に使ってみたいものです。筆者が思いつくのは次の2題です。

(カンタンな問題)平均律の周波数を計算してグランドピアノ88鍵の周波数をチェックしてみる
(ムズカシイ問題)いったい関数電卓では20.5をいかにして計算しているのか。そのアルゴリズムとは?

冒頭の写真はいまだ現役で使っている関数電卓SHARP EL-514です。小学6年生のときにはじめて買ったものです。当時、これで遊んだことを44年経った今でも鮮明に覚えています。(ムズカシイ問題)はその時の筆者の疑問です。紆余曲折を経て本当の答えにたどり着くには30年かかりました。

次回は(カンタンな問題)の謎解きです。

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桜井進(さくらいすすむ)様

1968年山形県生まれ。 サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。 (略歴) 東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。 理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。 高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。 公益財団法人 中央教育研究所 理事。 国土地理院研究評価委員会委員。 2000年にサイエンスナビゲーターを名乗り、数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。 子どもから大人までを対象とした講演会は年間70回以上。 全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など様々なメディアに出演。 著書に『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。 サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。

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