近年、ビジネスや社会の様々な課題をデジタル技術によって変革することを意味する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の取り組みが様々な分野で進められているが、今回はDXをインフラ分野に適用する取り組み「インフラDX」について紹介する。
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目次
インフラDXの概要
インフラDXとは、社会基盤を支えるインフラ分野において、デジタル技術やデータを活用して業務の効率化や改善を図ることで、組織やプロセス、企業や行政など社会全体の変革を目指すことを意味する。
インフラDXが必要とされる背景
コロナ禍をきっかけに社会のデジタル化が進展し、テレワークやオンライン会議の導入が進むなど、仕事や働き方が大きく変わっていくことが予測される中、建設現場は現地一品受注生産のため生産性向上は一朝一夕には難しく、官民一体となってインフラDXを進める必要がある。
インフラDXを推進することで、建設業が適切な発展を図れるようになり、維持管理や災害対応が確実に実施され国民の安全・安心に貢献することが期待される。
インフラ分野のDXの概要
(出典:https://www.mlit.go.jp/tec/content/01_211105DX.pdf)
国土交通省によるアクションプラン
インフラDXの取り組みを推進するため、国土交通省は「i-Construction」(2016年度から取り組み開始)を軸に、データとデジタル技術を活用してインフラ分野の業務や組織、プロセス、文化・風土や働き方の変革を目的に「国土交通省インフラ分野のDX 推進本部」を設置。
2022年3月には個別施策の目指す姿や実現のための工程、利用者目線で実現できる事項をとりまとめた「インフラ分野のDX アクションプラン」を策定した。
このアクションプランではインフラDX推進の取り組みとして、以下の3点を挙げている。
行政手続きのデジタル化
国土交通省のインフラ分野に係る各種手続きのデジタル化を図ることで、手続きのリモート化やペーパーレス化、接触を減らすタッチレス化などを目指す。
デジタルでの手続きでは、必要なデータの表示や即時申請が可能となるシステムを目指すとともに、1つの手続きのために複数部署に書類提出するなどの煩雑なプロセスを簡易化し、システムで一元処理する。
情報の高度化と活用
作業の効率化・高度化・省力化のため、3Dデータによるコミュニケーションを推進する。
BIM/CIMなどの3Dデータの流通やXRの活用、ウェブ会議システムの活用、インフラデータの公開・活用を促進するとともに、国民に対して3D映像で効果的な情報伝達や広報を行う。
現場作業の遠隔化・自動化・自律化
施工作業や出来高確認、災害復旧・点検など建設業の現場における各種作業の遠隔化や自動化、自律化技術の開発・社会実装を推進する。
そのために各種技術基準類の標準化や開発環境・プラットフォームの整備も図る。
インフラDXの個別施策
このアクションプランの中では、インフラDXの具体的な取り組みとして53の個別施策について各施策が目指す姿や、実現のための工程を紹介している。
その中から地理空間情報に関係するものをいくつかピックアップした。下記の施策を見ればわかる通り、インフラDXの施策は分野も幅広く多岐にわたっている。
- 水害などのリスク情報の3D表示の推進
- 防災ヘリの映像等から浸水範囲・土砂崩壊部をリアルタイムで解析して被害全容を迅速に把握
- 水害リスクマップ(浸水頻度図)の整備により防災・減災のための土地利用等を促進
- 衛星やドローン、カメラなどを活用して港湾における災害関連情報の収集・集積を高度化
- xROAD(道路データプラットフォーム)を構築し、維持管理のほか様々な分野で活用
- 人流データの利活用拡大のための流通環境整備
- Project PLATEAUによる3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化の推進
- 位置情報の共通ルールとして国家座標を推進
- 衛星測位と音波による水中測位技術と水中施工機械の遠隔操作技術を組み合わせた高精度の遠隔操作・自動化水中施工システムを開発
- 3D点群データを用いた鉄道施設点検システムの開発
- 除雪現場の生産性および安全性を向上する「i-Snow」
アクションプラン第2版の骨子を公表
国土交通省はアクションプラン初版に引き続き、2023年4月には第2版の骨子を公表した。
初版では、省内各部局で実施しているDX施策をそのまま記載したものが多かったのに対して、第2版への改訂にあたり省全体の総合力を発揮することが必要として下記の2つの視点を挙げている。
分野網羅的な取り組み
今後充実させるべき分野を整理するため、省内各部局から追加された施策を「インフラの作り方の変革」「インフラの使い方の変革」「データの活かし方の変革」という3分野に振り分けてとりまとめる。
組織横断的な取り組み
参事官を新設して「インフラ分野のDX推進本部」に参画させることで、研究機関(例:国総研)のサポートを得ながら、推進本部が各部局のDXのデジタル技術と業務変革の知識・経験を集積し省内で共有。それと同時に他省庁・民間・学術界とも集積・共有を図る。
国土交通省は今後、第2版の骨子に基づき、推進本部が中心となって各部局と打ち合わせを重ねながら取り組みを進め、その結果を踏まえてアクションプランを第2版に改訂する予定である。
インフラ老朽化が進む一方で建設業の労働者数の減少や高齢化が課題となっている中、インフラ分野の効率化・省力化を図るためにも、この分野においてはさらなるDX推進が求められている。
国土交通省によるアクションプランの策定はインフラDXを大きく後押しするものとして期待される。
インフラDXにおける3分野
(出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001602854.pdf)
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<参考>国土交通省ウェブサイト「インフラ分野のDX」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000073.html