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My story|空間情報と歩んだ40年 第6回

インフォマティクス 長島ファウンダーによるコラム第6回です。

CADからGISへ

日本ではGDSのようなCADは、3次元表現機能により複雑な形状をパースにしてプレゼンを行うためのツールとして使われる傾向がありました。

実際、パースの静止画を多数作成し、3次元アニメーションにも使われていました。

一方海外では、GDSは2次元図面を描くツールとして使われていました。

その過程で、BIM(Building Information Modeling:コンポーネントのもつ形状情報や属性情報のデータベースを建築設計・管理・施工に用いる手法)という概念で使われる傾向がありました。

GDSはさまざまな建物のファシリティーマネージメント(FM)に使われ、コダック、ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ、スタンフォード大学などで施設管理システムとして活躍しました。

その後、アメリカ、オーストラリアなどでGDSをマッピングシステムとして使う試みが始まり、当社でも1985年4月、AMS(Area Management System)というマッピングシステムをリリースしました。

このシステムで、連続的にタイルを貼り合わせるように図面ファイルをシームレスに表示する仕組みを構築したことで、図面が無限の広がりを持てるようになりました。

これが、位置情報とその他の情報を連携させるGIS(地理情報システム)につながっていきました。

1980年後半から、海外でGDSをGISのように利用する事例も出てきました。

当時、最先端の事例であるオーストラリア・キャンベラ市のプロジェクトを視察したことがあります。

これは、GDSを使って全市の土地管理、各種インフラなどの施設をシステム上で管理し、行政として実運用している事例でした。

この事例を日本で紹介するために、1990年と1994年にオーストラリア大使館でキャンベラ市のGIS担当者を招きセミナーを開催しました。

1980年代後半、英国ではARC社のスタッフが独立してCadcorpという会社を立ち上げ、PCのMS-DOS上で動くCADの開発を始めていました。

このCAD開発はアダム・ゴーン・ケイン(約20年後にインフォマティクスの副社長に就任、現在は退任)が行っていたのですが、当時ミニコンピュータ上で稼働しているGDSに比べると、機能が乏しく実用化の目途は立っていませんでした。

その数年後、アダムがWindows3.0のPCで動くCADを開発。これが1992年2月に発売開始した、Windows上で動くCADシステム「MicroGDS」です。

1992年、社名をエー・アール・シー ヤマギワから「情報を科学する(informatics)」という言葉を語源とする「インフォマティクス(Informatix)」に変更しました。

1992~1993年、日本でのGIS販売計画の具体化に伴い、英国でAdamによる日本語化も始まりました。

GISソフトウェア「SIS」の販売を開始

戦後最大規模と言われる被害を出した阪神淡路大震災(1995年1月17日)発生後、関係省庁との連携のもと、GISの効率的な整備とその相互利用を促進するために1995年9月「地理情報システム関係省庁連絡会議」が設置され、GIS(地理情報システム)実用化の気運が一気に高まりました。

1995年春、建設省建築研究所(当時)で稼働していたGDSで、阪神淡路大震災の被害状況を正確に描いた地図の製作協力を依頼されました。

デジタルな地図を探すことから始まり、数ヶ月後には被害状況を描いた地図が完成しました。

これを機に弊社内でも地理情報システムをビジネスにしようという機運が高まり、1995年7月、GISソフトウェア「SIS」の販売が開始されます。

Windows上で動くGISとしては当時唯一のものでした。その後、爆発的にヒットしたWindows95(1995年8月販売開始)の販売開始に合わせてバージョンアップ。

その後20年以上にわたり、先日リリースされたバージョン9.0に至るまで、SISはより高機能により使いやすく進化を続けてきました。

1998年の長野オリンピックの警備システムなどGISによるプロジェクトも次々と案件化していき、社会の安全安心に関わる業務を支援してまいりました。

空間情報シンポジウムの開催

空間情報シンポジウムは、毎年開催していたGDSユーザ会の延長として、阪神大震災発生の翌年(1996年)からスタートしました。

「ユニークで良いシステムがあることを多くの人に知ってもらい、驚いてもらいたい」という思いから始まったイベントです。

1995年のSIS販売開始以来、多数のユーザに恵まれ、おかげさまで毎年開催を続け、延べ30,000名以上ものお客様にご来場いただきました。

MIT時代の恩師ネグロポンテ教授には、会社創立10周年(1991年)、20周年(2001年)、35周年(2016年)の記念イベントに登壇していただきました。

これからも「知恵の創造」の実現を目指す

コンピュータを取り巻く環境はこの約40年間で大きく様変わりしましたが、「良いシステムを提供し、人々の役に立ちたい」という当初の思いは変わりません。

学び合う集団として「知恵の創造」を実現することも変わらず目標にしていることです。

インフォマティクスは、2011年に販売を開始した「空間情報クラウドコンピューティング」を中核とする総合的な空間情報サービスカンパニーとして、これからも安心安全な社会に向けた情報基盤の構築や市民生活を支援する空間情報の提供など、幅広い分野での空間情報の適応を探っていきたいと思います。

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空間情報クラブ編集部

空間情報クラブはインフォマティクスが運営するWebメディアです。GISソフト「SIS」の便利機能を紹介するSIS活用講座や用語解説をはじめ、地図、AI機械学習、XR、数学をテーマにしたコラムを多数掲載。楽しみながらより深く学んでいただけるお役立ち情報を発信しています。

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