衛星データというと、従来は専門知識を持たない人には取り扱いが難しいというイメージがあった。
しかし近年、Googleが提供する「Google Earth Engine」などの「衛星データプラットフォーム」と呼ばれるサービスの普及により、その状況が大きく変わってきた。
中でも日本発の衛星データプラットフォームとして注目されるのが、さくらインターネット株式会社が経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化・データ利活用促進事業」として開発・運用に取り組んでいる「Tellus(テルース)」だ。
目次
さまざまな衛星データを可視化|Tellus OS
「Tellus」トップページ
Tellusは、衛星データや衛星データを扱うさまざまなツールを提供するプラットフォーム。
アプリケーションの開発環境や、衛星データ活用のためのトレーニング、衛星データコンテスト、衛星データ活用の情報を提供するオウンドメディアなどの機能を有している。
Tellusでは、クラウド環境で衛星データを簡単に可視化できるツール「Tellus OS」を提供している。
従来、衛星データを可視化するには、GISソフトで読み込めるようにデータフォーマットを変換するなどの前処理が必要だった。
Tellus OSを使えば直感的に操作できるインターフェイスで、撮影時期を指定するだけで簡単に衛星画像を地図上に重ねることができる。
複数のデータを重ねることも簡単で、衛星データ以外の地上データ(例:人流データ)を重ねてさまざまな分析を行える。
Tellus OSは、会員登録(無料)すればログインできる。背景地図はOpenStreetMap(OSM)のカラー地図またはモノクロ地図、AVNIR-2の衛星写真から選択できる。
左メニューの「マイライブラリ」から「データ」を選択すると、地図上に表示できる衛星データの一覧が表示される。
AVNIR-2やASNARO-1、Landsat-8、ALOS-3相当データの光学衛星から、合成開口レーダー(SAR)を備えたASNARO-2、気象衛星ひまわりなど、さまざまなデータを選択して地図上に可視化させることができる。
Tellus OS
Map design by MIERUNE. Maptiles by MapTiler. Data by OpenStreetMap contributors, under ODbL., ©NEC Corporation, ©さくらインターネット
スマホから収集した位置情報データを可視化
Map design by MIERUNE. Maptiles by MapTiler. Data by OpenStreetMap contributors, under ODbL., ©Blogwatcher, ©さくらインターネット
各種データや分析ツールを入手|Tellusマーケット
Tellusのもう一つの機能が、衛星データや分析ツール、衛星データと組み合わせて活用可能な地上データを提供するマーケット機能「Tellusマーケット」だ。
提供データとしては、以下のような種類を用意している。
- 気象情報
- 防災情報
- 人口統計
- 植生指数
- 背景地図
- 行政区域データ
- 宅地利用動向調査
- スマートフォンから収集した位置情報ビッグデータ
このほか、独自の解析ツールも無料で利用できる。
- 干渉処理ツール「TelluSAR」
- 差分抽出ツール「Tellus-DEUCE」
- 駐車場検知ツール「Tellus-VPL」
Tellusマーケットで入手したデータやツールはTellus OS上で使用可能なほか、APIで提供されているものはTellusの開発環境上で使用できる。
無償で利用可能なものと、従量課金やサブスクリプションで提供されているものとがあり、いずれも基本的にはTellus内の開発環境で利用可能となるが、データによっては外部の環境で利用できる。
Tellusマーケット
差分抽出ツール「Tellus-DEUCE」
衛星データの売買が可能|Tellus Satellite Data Traveler(新機能)
Tellus OSやTellusマーケットに加えて、2021年10月に追加されたのが、衛星データの売買が可能な機能「Tellus Satellite Data Traveler」だ。
同機能は、衛星のセンサーの種類や時刻、AOI(関心領域:Area of Interest)を指定して検索し購入できる機能で、ユーザーの任意の環境に購入した衛星データを保存することも可能となる。
この新機能において衛星データを販売する衛星データプロバイダーは、2021年12月現在、日本スペースイメージング株式会社(JSI)、日本地球観測衛星サービス株式会社(JEOSS)、株式会社パスコの3社。
JSI社が取り扱うMaxar社の衛星およびJEOSS社のASNARO-2のデータはすでに販売開始しており、パスコ社のASNARO-1と今年度打ち上げ予定のALOS-3のデータは今後順次、販売を開始する予定だ。
Tellus Satellite Data Travelerでは、購入した衛星データによってはユーザーの任意の環境下で扱えるため、より自由度の高い使い方が可能となる。
現時点ではTellus Satellite Data TravelerはTellus OSやTellusマーケットとは連携しておらず、それぞれで購入したものを別のところで表示させることはできない。
ただし、TellusマーケットのデータやTellus Satellite Data Travelerで購入したデータをTellusの解析環境(データによっては任意の環境下)で解析することはできる。
同社は今後3つのサービスの連携強化を目指している。
Tellus Satellite Data Traveler
衛星データ関連のオウンドメディア|宙畑(そらばたけ)
このようなTellusの各機能の詳細については、Tellusのオウンドメディア「宙畑」(そらばたけ)で解説されている。
宙畑では、衛星データに関する基礎知識や最新ニュース、衛星データ関連のビジネスを展開している注目企業や市場動向に関する記事も読めるので、衛星データについての情報収集に役立てていただきたい。
また、Tellusでは、Tellusを使って衛星データを扱う方法を学べる教材を用意しているほか、衛星データを使ったデータ分析コンテスト「Tellus Satellite Challenge」も開催しており、衛星データビジネスを展開する上でのさまざまなヒントを得られる。
衛星データの入手から活用、関連情報の収集に至るまで、多彩なコンテンツが詰まったこのプラットフォームを活用し、衛星データを上手に活用してみてはいかがだろうか。
衛星データ関連のさまざまな情報を発信する「宙畑」
■URL
Tellus
https://www.tellusxdp.com/
※本記事で紹介したサービスに関する詳細は提供団体様あてにお問い合わせください。