人と星とともにある数学 第46回

正方形分割正方形問題 後編

ケンブリッジ大学の4人組によるブレイクスルー

ここから堰を切ったように単純完全正方形分割正方形が発見されていくことになりました。その大きなブレイクスルーはケンブリッジ大学の4人の大学生によってなされました。

先ほどのブルックスにスミス、ストーン、そしてテュッテの3人を加えた4人は、1903年のデーンの結果を研究し電気回路を使えば問題が解けるという画期的解法を見つけ出しました。

まさに正4角形ならではの4人組でした。彼らは電気という“魔法”を正4角形にかけることを思いついたのです。

この“魔法”によってこれまで絶望視されていた正方形が突然解けはじめました。彼らが見つけ出した単純完全正方形分割正方形は、一辺が5468で55個の正方形で埋め尽くされたものでした。

ブルックス、スミス、ストーン、テュッテによる単純完全正方形分割正方形

ここから問題は最小の単純完全正方形分割正方形を発見することになりました。4人組は電気回路を使った方法で、次の26個の解を見つけました。

4人組による単純完全正方形分割正方形

1978年、最小の単純完全正方形分割正方形

1978年に、21個の解がデゥイベスチジンによって発見され、同時にこれが最小であることの証明もなされました。

デゥイベスチジンによる最小の単純完全正方形分割正方形(1978年)

こうして、1902年にはじまるSquared Square問題は70年以上をかけて一つの解決をみました。

『カンタベリー・パズル』の中でデュドニーは問題の最後で、これはパズル、プロブレム、エニグマといった言葉では表せないほどの難問“リドル”と呼ぶにふさわしいと述べています。riddle(リドル)には難問、不可解な謎という意味があります。

1991年、秋田の漆工芸職人による驚異の魔方陣

前回紹介した魔方陣と正方形分割正方形、この2つを一緒にした問題を解いてみせた日本人がいます。

秋田の漆工芸職人、阿部楽方氏(1928−)は、高校時代に方陣と出会い魅了されました。以来今日まで幾多の驚異の方陣を発見し、世界でも認められる方陣界の「超人」です。

1991年、彼は世界初の「正方形分割方陣」を発表しました。正方形分割正方形の中に魔方陣をつくってみせたのです。1978年、デゥイベスチジンによる最小の単純完全正方形分割正方形は21個の正方形でできていますが、それらが魔方陣でできていて、全体の正方形も魔方陣となっている魔方陣です。

2007年、私は阿部楽方氏を訪ねて秋田のご自宅まで取材に行きました。60年以上にわたり方陣を考えつづけてきた楽方氏は、今もなお紙と鉛筆だけで法則を発見し新しい方陣を発見しつづけています。

阿部氏曰わく「面白いということに加えて、他の人が解けないのを解くというのはまた特別におもしろい。死ぬまでに、問題はたくさんある。今ある問題でも死ぬまでには解けない。健康にもいいです」。

健康の秘訣は温泉につかり方陣を考えることだと語る楽方氏は、まさに方陣を楽しむ超人でした。

額に納められた正方形分割224魔方陣と阿部楽方氏(桜井進撮影)

執筆者ご紹介  桜井進(さくらいすすむ)様
1968年山形県生まれ。
サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。
(略歴)
東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。
理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。 高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。
公益財団法人 中央教育研究所 理事。
国土地理院研究評価委員会委員。
2000年にサイエンスナビゲーターを名乗り、数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。 子どもから大人までを対象とした講演会は年間70回以上。
全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など様々なメディアに出演。
著書に『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。

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