ジオ三昧のススメ

生活やビジネスに役立つ位置情報デバイス
第4回:GPSトラッカー

地図表示機能や測位機能を搭載したさまざまなデバイスの概要や現状について紹介するこの連載、第4回となる今回は、位置情報をリアルタイムに把握できる機器「GPSトラッカー」について紹介する。

GPSトラッカーとは、衛星測位機能により位置情報を取得し、それを携帯電話回線やIoTネットワークなどを使って送信する端末で、離れた場所からリアルタイムに機器の位置を確認できる。法人向けの車載端末のほか、歩行者用の機器もあり、さまざまなシーンで利用されている。

GPSトラッカーの活用事例としては、まず配送車両や営業車両の運行管理が挙げられる。運送会社がGPSトラッカーによる動態管理システムを導入することで配送業務の効率化に役立てたり、営業車の位置をオフィスの管理者が把握することで、移動中にさまざまな指示を送ったりすることもできる。また、車両の移動軌跡をもとに巡回ルートを効率化すれば、運転時間やガソリン代などのコスト削減にもつながる。

さらに、移動中に顧客からの問い合わせがあった場合に、最寄りのスタッフがすぐに駆けつけるといったサポート業務にも活用できる。このほか、渋滞や事故、工事の情報など、さまざまなトラブルに応じて最適なルートをドライバーに指示することも可能だ。

バスやタクシーにGPSトラッカーを搭載して、インターネット経由で利用者に位置情報を提供することにより、乗客の利便性を高めることも可能だ。バスの現在地をスマートフォンなどで調べられる「バスロケーションシステム」は近年、全国各地のバス会社で導入事例が増えつつある。また、タクシーについても、ユーザーがスマートフォンで配車を依頼すると、現在地の近くを走るタクシーを無線で配車する「タクシー配車アプリ」が普及しつつある。

GPSトラッカーは、車両だけではなくモノの追跡にも活用できる。たとえば日建リース工業では、同社が開発したGPSトラッカー「TranSeeker」を、レンタル用の物流パレット(荷物を載せて運搬するための平らな台)に搭載することで、パレットの位置を特定し、貸し主である日建リース工業が回収を行う「回収サービス付きパレットレンタル」というサービスを提供している。GPSトラッカーを活用することで、パレットの紛失を未然に防ぐことができる。20180903_1

日建リース工業の「TranSeeker」

また、車両やモノではなく、人にGPSトラッカーを持たせてフィールド業務を管理することもできる。たとえば街中でチラシやカタログの配布を行うポスティング業務において、配布員がトラッカーを身に付けることにより、管理者は配布員の行動を管理できる。こうすることで配布員の移動軌跡をもとに、ポスティングの効率アップに役立てることが可能となる。

このほかの活用方法としては、高齢者や子どもの見守りが挙げられる。たとえばセコムでは、GPSトラッキング機能を搭載したセキュリティ専用端末「ココセコム」を使用した子どもや高齢者の見守りサービスを提供している。端末を持った家族の現在の居場所をパソコンやスマートフォンから確認することが可能で、必要に応じて緊急対処員が現場に急行するサービスや、一定間隔のコールに応答しないと自動的にセコムへ異常が伝えられる「みつめてコール」などのサービスも提供している。

「ココセコム」以外の見守り用のGPSトラッカーとしては、ソフトバンクが提供する「みまもりGPS」や、ビーサイズ(Bsize)が提供する「GPS Bot」などが挙げられる。これらのサービスでは、あらかじめエリアを設定することで、GPSトラッカーを持った人がそのエリアから出てしまった場合にメッセージなどを送る「ジオフェンス機能」も利用できる。高齢者の場合、認知症や徘徊などを防止できるほか、持病を持つ高齢者に持たせることで突然の発作などにも対応できる。

最近では、登山の遭難防止にもGPSトラッカーが活用されている。リアルタイムシステムズが提供するGPSトラッカー「WillGPS P99J」は、スポーツ向けの防水・防塵仕様で、登山などに適している。登山中にGPSトラッカーで位置情報を定期的に発信することで、離れた場所にいる家族が登山者の位置情報を把握し、有事の際に役立てられる。

また、アウトドア向けGPSトラッカーの最新の話題としては、米国グローバルスター社の日本法人であるグローバルスタージャパンが、衛星回線を使った位置情報サービス「Spot」の提供を日本で開始した。同社が提供する衛星GPSトラッカー「SPOT Gen3」や「SPOT Trace」は、端末から衛星に向けて位置情報を発信することが可能で、山奥や海上など携帯電話回線のエリア外でも位置情報を確認できる。20180903_2

グローバルスタージャパンの「SPOT Gen3」

画像提供:グローバルスタージャパン株式会社

携帯電話回線を使わない方法としては、このほかに長距離無線技術のLPWA(Low Power Wide Area)に対応したGPSトラッカーも登場している。株式会社博報堂アイ・スタジオは2017年9月に、LPWA対応のGPSトラッカーを使ったアウトドア向け位置情報サービス「TREK TRACK」を開始した。LPWAは携帯電話回線と比べて消費電力が低く、アウトドアでの使用に適している。

位置情報を送るための通信手段の選択肢が広がる中、GPSの精度についても進化が始まっている。株式会社フォルテが準天頂衛星「みちびき」のサブメータ級測位に対応したGPSトラッカー「FB102」を発売している。GPSによる1周波での衛星測位では、誤差は10m程度と言われるが、サブメータ級に対応したGPSトラッカーでは誤差1~2m程度で測位できる。20180903_3

フォルテが提供する「みちびき」対応GPSトラッカー「FB102」

画像提供:株式会社フォルテ

近年は、専用端末ではなく、スマートフォンにGPSトラッキングアプリをインストールしてGPSトラッカーとして使う事例も増えてきている。一方で、法人向けのGPSトラッカーには温度や湿度、加速度、衝撃センサーなどを搭載する製品も増えており、このような機器を使うことで位置情報とともにさまざまなセンサー情報を入手できる。

いずれにしても、衛星測位を使って位置情報を取得し、遠隔地から人やモノの居場所を把握するニーズは幅広い分野で高まっており、端末の低コスト化や測位精度の向上など、さまざまな面での進化が期待される。

執筆者ご紹介  片岡義明(かたおかよしあき)様
フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。