人と星とともにある数学 第29回

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2018年7月5日


三角関数百景

三角関数のファミリー

一般に知られている三角関数は3種類サイン、コサイン、タンジェントです。これらが三角関数の基本であることは、1つの直角三角形の2辺の組合せが3種類あるからに他なりません。

本連載で紹介してきたようにここ二千年の間、わたしたちは三角関数とともに地球に生きて文明を築いてきました。それは地図、航海術、天文学、測地学、測量、物理学、電子工学そして数学といった世界を語る言葉が三角関数だったのです。

わたしたちは、この世界が三角関数によって計算・説明されることを二千年かけて理解してきたということです。

その発展の過程で様々な三角関数が考案されてきました。ここに三角関数ファミリーを紹介してみましょう。

【三角関数の逆数】
xの逆数とは1/xのことをいいます。20180703_1

secは正割関数(secant:セカント)、cosecは余割関数(cosecant:コセカント)、cotは余接関数(cotangent:コタンジェント)と読みます。

【三角関数の逆関数】
関数y=f(x)とは、xに対してyが対応することを意味します。このとき、yに対してxが対応する関数を考えることができます。これを関数fの逆関数といいf-1と表します。

簡単に示すならば、三角関数sinπ/2=1に対して、逆三角関数sin-11=π/2ということです。正確には、sinの逆三角関数y=sin-1xの定義域(xの変域)-1≦x≦1をセットにする必要があります。

三角関数sin・cos・tanの逆三角関数sin-1・cos-1・tan-1には特別に別名があります。それぞれ、arcsin(アークサイン)・arccos(アークコサイン)・arctan(アークタンジェント)と呼ばれます。sinπ/2=1における、π/2は半径が1の円の弧長を表します。逆関数sin-11=π/2はπ/2という弧長を表しているので、弧を表すarcが使われます。

さらに三角関数の逆関数は先に紹介した三角関数の逆数sec(セカント)・cosec(コセカント)・cot(コタンジェント)に対しても、それぞれarcsec(アークセカント)・arccosec(アークコセカント)・arccot(アークコタンジェント)と定義されます。

三角関数と逆三角関数をまとめてみましょう。20180703_8

【双曲線関数】
三角関数は円x2+y2=1によって定義されるので、別名、円関数と呼ばれます。双曲線x2-y2=1によって定義されるのが双曲線関数です。20180703_2

sinhは双曲線正弦関数 (hyperbolic sine:ハイパボリックサイン)、coshは双曲線余弦関数 (hyperbolic cosine:ハイパボリックコサイン) と呼ばれます。

【測量用の三角関数】
天文学や航海術における測量で利用されるのが球面三角法です。ここに特別に現れる三角関数があります。20180703_3

versinは正矢関数、havは半正矢関数(haversine)、exsecは外正割関数(exterior secant)と呼ばれます。

三角関数のグラフ鑑賞

上で出てきたcosh双曲線余弦関数は身近な風景に隠れています。垂れた電線やネックレスの描く曲線です。このことから双曲線余弦関数のグラフは懸垂線と呼ばれます。

20180703_4

サイクロイドとは、平面内において1直線上を円が滑ることなく転がるとき、円周上の定点が描く軌跡です。

この仲間がいくつかあります。アステロイドは、ある円内を、その4分の1の半径を持つ円が滑ることなく転がるとき、円周上の定点が描く軌跡です。

ヨハン・ベルヌーイ(1667-1748)やライプニッツ(1646-1716)らによって研究されました。カージオイドは、ある円外を、それと等しい半径をもつ円が滑ることなく転がるとき、円周上の定点が描く軌跡です。20180703_5

最新のグラフ描写ソフトを用いることで、曲面のグラフを見事に描き出すことができます。方程式の風景からはとても想像できない、曲面の風景がコンピュータによって目の前に出現する様子に、ただただ驚かされます。20180703_6

 

20180703_7

本連載で展開してきたように、三角関数のおかげでコンピューターの誕生に到る長い数学物語がありました。そのコンピューターが三角関数のグラフを描く風景を眺めるとき、感慨無量の思いがします。


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執筆者ご紹介  桜井進(さくらいすすむ)様
1968年山形県生まれ。
サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。
(略歴)
東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。
理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。 高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。
公益財団法人 中央教育研究所 理事。
国土地理院研究評価委員会委員。
2000年にサイエンスナビゲーターを名乗り、数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。 子どもから大人までを対象とした講演会は年間70回以上。
全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など様々なメディアに出演。
著書に『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。