ジオ三昧のススメ

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2018年6月1日


生活やビジネスに役立つ位置情報デバイス
第1回:ハンディナビ

空間・位置・地理情報を気軽に扱える機器として、現在もっとも普及しているスマートフォンは、用途に応じて色々アプリをインストールすることで地図になったり、カーナビゲーションになったり、GPSロガーになったりと、多彩な使い方ができるのが利点だ。

 しかし、測位機能を搭載した位置情報デバイスはスマートフォンだけではなく、ほかにもさまざまな機器がある。この連載では、地図表示機能や測位機能を搭載したさまざまなデバイスの概要や現状について、種類ごとに紹介していきたい。今回は、“ハンディナビ”と言われる携帯GPS端末を紹介する。

ハンディナビは、ディスプレイに表示されたデジタル地図上に現在地を表示できる携帯端末で、移動軌跡を記録する機能や、好みの地点を登録する機能などを搭載している。最近では、カーナビゲーションシステムのように、歩行者向けに市街地や登山道のルート案内を行う機能を搭載した製品もある。

ハンディナビには、小型のディスプレイに操作ボタンを搭載しているものや、大きなGPSアンテナを搭載しているもの、スマートフォンのようにタッチ操作のものなどさまざまな種類がある。街中での歩行者向けナビゲーション用端末としてはスマートフォンが普及しているため、主に登山などアウトドアで使用されることが多く、“トレッキングナビ”とも呼ばれるが、汎用性が高く、自転車やバイクへの車載端末として使っているユーザーもいる。

ハンディナビのようなカーナビゲーション以外の単体GPS機器が本格的に普及し始めたのは、2000年5月に、米国がGPS衛星のデータに故意に誤差を加える「SA(Selective Availability)」が解除されてからである。それまでのGPSは、SAによって誤差がおよそ100m前後に抑えられていたが、解除後は数10mと大幅に精度が向上し、DGPS(Differential GPS)などの補助がなくても高精度な測位が可能になった。

ハンディナビは一般道路ではなく、山道などで使用されるため、マップマッチング(地図上の道路の位置に合わせて自己位置を補正する機能)を利用するカーナビゲーションに比べて、より高精度を求められる。そのため、登山で使用されるハンディGPSは、SA解除により実用性が大いに高まった。

なお、ハンディナビだけでなく、GPSランニングウォッチやGPSサイクルコンピューターなどの単体GPS機器のメーカーとしては、GARMIN社の製品の存在が大きい。現在、同社のハンディナビは、小型・軽量の「eTrex」シリーズ、カメラを搭載した「Oregon」シリーズ、大型アンテナを搭載した「GPSMAP」シリーズなどがある。

20180601_1
eTrex 20xJ

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Oregon 750TJ

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GPSMAP 64sc J

画像提供:ガーミンジャパン株式会社

いずれも共通しているのは、バッテリーに汎用の単三形電池を使用できることである。スマートフォンは専用の充電式リチウムイオンバッテリーを使用しており、バッテリー交換ができないものも多い。単三形の乾電池であれば、電池切れの際に山小屋などで手に入れられるため、長期の山行にも安心だし、耐寒性の高い1.5Vリチウム乾電池を使用すれば冬山登山にも対応できる。スマートフォンはGPS機能を使用するとバッテリーの消耗が激しくなるため、山行中はスマートフォンの電源を切ってトレッキングナビを使用する人もいる。

スマートフォンに比べて耐衝撃性や防水・防塵性が高いのも利点である。筆者は過去に何度かGARMIN製のハンディナビを地面に落下させたことがあるが、ハンディナビは激しく路面に叩き付けられたにもかかわらず故障はしなかった。スマートフォンよりも過酷な環境で使うことを想定しているために作りは頑丈で耐寒性能も高い。

さらに、冬山登山などにおいて手袋を装着して使うことを想定している点も大きい。スマートフォンの場合、タッチディスプレイに対応した手袋でないと操作することはできないが、ハンディナビはタッチ式ではなくボタンやレバーで操作するものが多く、GARMINについてはタッチ式のものであっても手袋をはめたたま操作できる。

このように、単体のGPS機器であるハンディナビは、アウトドア環境においてスマートフォンを上回る性能と使い勝手の良さがある。最近では、スマートフォンとの連携機能を搭載している製品もあり、ハンディナビで記録したデータをアプリ上で確認したり、現在の場所をリアルタイムでウェブ上に公開したりすることもできる。

ハンディナビには、衛星測位によって現在地を地図上で確認できるという、紙の地形図にはない便利な機能がある。紙の地形図を使いこなすには、等高線などを見ながら景色を確認して現在地を推定するなど、地図から情報を読み取る“読図”という技術が不可欠であり、これにはある程度のトレーニングが必要だが、ハンディナビを使えば、読図の技術を持たない人でも簡単に現在地を知ることができる。

ただし、たとえ頑丈で電池持ちのいいハンディナビと言えど、デジタル機器である以上、電池切れや故障が起きる可能性がまったくないとは言えない。登山など道迷いや遭難する恐れがある場面においてハンディナビを使用する場合は、いざというときのために、紙の地図とコンパスも必ず持っていくことをお忘れなく。


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執筆者ご紹介  片岡義明(かたおかよしあき)様
フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。