人と星とともにある数学 第13回

標準

2017年1月12日


超入門・リーマン予想

リーマンゼータ誕生物語 その1

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素数定理

本連載はオイラーゼータ誕生物語まで進んできました。ゼータ関数の物語は、いよいよリーマンゼータ誕生物語に続きます。ドイツの数学者リーマン(1826-1866)が、オイラーによるゼータ関数を取り上げようとした理由が素数です。

2016は一の位が6(偶数)なので偶数であり、素数ではありません。合成数と呼ばれます。

2016=25×32×7
素因数分解

2016に1加算した2017は素因数分解できない数、素数です。1と自分自身以外に約数を持たない数、素数には深淵な謎が見つかります。自然数1,2,3, …の中における素数の出現法則です。紀元前から始まる素数探究の歴史は、素数の出現法則探究の歴史です。

18世紀の数学者オイラー(1707-1783)は素数とゼータ関数(オイラーゼータ)の関係(オイラー積)、そして素数の出現法則である素数定理を発見しています。

オイラーに続くドイツの数学者ガウス(1777-1855)も発見した素数定理──素数の出現法則とは、自然数の中に素数がどのくらいの割合で含まれているかを述べる定理で、次のように表現されます。

x以下の自然数に含まれる素数の数π(x)は、x/loge x に近似できる。
素数定理

オイラー、ガウス以外にもフランスの数学者ルジャンドル(1752-1833)やロシアの数学者チェビシュフ(1821-1894)らも素数定理にたどり着いています。

素数定理に不満を持ったのがリーマンです。無限ではなく「有限」の自然数の中に含まれる素数の個数を知ることはできないのだろうか。これは、「無限」に対する素数定理に比べて非常に難しい問題なので素数定理が先に発見されました。

リーマンは実直に自らの疑問に対峙します。はたして、1859年にレポート「与えられた数より小さい素数の個数について」に研究はまとめられました。たった8ページの中に、驚くべき記述が書き込まれました。それがリーマン予想です。

残念ながら、「リーマン予想」はその名前から内容がまったく想像できません。

フェルマー予想とポアンカレ予想

1994年、アメリカの数学者アンドリュー・ワイルズ(1953-)によって解かれた「フェルマー予想」は、中学生にも「問題」は理解できます。

同じく、2002年、ロシアの数学者グレゴリー・ペレリマン(1966-)によって解決された「ポアンカレ予想」もフェルマーよりは難しいものの、「問題」の輪郭はぼんやりとでも理解できます。

数学の歴史の中で難解とされ百年を越える長い時間と幾多の数学者の努力がつぎ込まれた問題であっても、「問題の理解」は容易なものは数多くあります。

「問題の理解」とは、理解の第一段階のことです。理解の程度がまさに問題です。問題が解かれることは真に問題が理解され、深部にある仕組みが発見されることを意味します。

フェルマー予想とポアンカレ予想はそれぞれ数論、幾何学の問題として中学、高校程度の数学の準備ができていれば「問題の理解」は難しくはありません。

1640年、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1601-1665)によって提唱されたのが次です。

nが3以上のとき、xn+yn=znをみたす0でない自然数x、y、zは存在しない。
フェルマー予想

n=2の時にピタゴラスの定理であることがこの問題にとって幸運なことです。ピタゴラスのおかげでフェルマーの「問題の理解」は助けられています。

32+42=52、52+122=132、82+152=172
ピタゴラスの定理を満たす自然数(ピタゴラス数)の例

ピタゴラスの定理を満たす自然数x、y、z(ピタゴラス数)はいくらでも見つかるのに、nが3以上になるとそうはいかなくなるというのがフェルマー予想です。
350年に渡り、プロ、アマを問わず魅了し続けることができたのも、その問題の明解さです。

1904年、フランスの数学者アンリ・ポアンカレ(1854-1912)によって提唱されたのが次です。

n次元ホモトピー球面はn次元球面に同相である。
ポアンカレ予想

比喩的に述べると、「トーラスのような穴の開いていない宇宙はまん丸だろう」という予想ですが、フェルマーと同じくn=2が問題の発端です。2次元(n=2)という幾何学の源流から始まることが、問題の理解を助けたといえます。

リーマン予想

一方、「リーマン予想」の状況は一変します。

百年以上解かれなかった難問であることは「フェルマー予想」と「ポアンカレ予想」と同じですが、「問題の理解」については大きく異なります。

アマチュアにとってほぼ絶望的と言っても過言ではない難しさがあります。

リーマンのレポート「与えられた数より小さい素数の個数について」の記述が次です。

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これこそ「リーマン予想」の原点です。これを翻訳したのが次です。

ゼータ関数ζ(s)の自明でない零点は、すべて直線 Re(s)=1/2上にある。
リーマン予想

発表されて158年経つにも関わらず、一般の「問題の理解」は一考に進んでいない原因がこの文章の難しさにあります。

その理由は上記を読んでみれば明らかです。意味がほとんど理解できない文章です。

リーマン予想=ゼータ予想

リーマン予想とは、ゼータ関数の性質についての予想──「ゼータ予想」に他なりません。

初心者を寄せ付けない「ゼータ」ですが、ここから読み始めた方は、ぜひこれまでの連載を読んでください。(末尾の関連記事をご参照ください。)

フェルマーやポアンカレと違って、リーマン予想は誰にでもわかる出発地点というか道標のようなものがありません。ならば、フェルマーのように10代の人たちにも理解できる道筋はないのだろうか。サイエンスナビゲーター®は挑戦し続けてきました。

高校生からわかる──超入門・リーマン予想(『リーマン予想がわかる』黒川信重編著、日本評論社)と毎日小学生新聞連載「わくわく数の世界の大冒険」で小学生以上を対象にリーマン予想を紹介しました。

本連載では、超入門・リーマン予想と題して「リーマン予想」の遙かなる調べをここから紹介していきます。

次回「神秘の数、素数の世界」に続きます。


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執筆者ご紹介  桜井進(さくらいすすむ)様
1968年山形県生まれ。
サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役。
(略歴)
東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。東京理科大学大学院、日本大学芸術学部非常勤講師。
理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。
2000年、日本初のサイエンスナビゲーターとして数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。
東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。