東京タワーと東京スカイツリーが同じ高さに見える場所は?

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2016年7月8日


東京タワーと東京スカイツリーが同じ高さに見える場所について、空間情報分析の観点から考察してみたいと思います。

東京タワー vs. 東京スカイツリー

かつて、電波塔として日本一の高さを誇った東京タワー。2012年の東京スカイツリー開業によりその座を譲り渡しましたが、ふと、この2つのタワーが同じ高さに見える場所ってどこだろう?と考えました。

東京タワーは333メートル、東京スカイツリーは634メートル。両者は直線距離で8,220メートル離れています。20160702_1

相似図形に着目

この問題は、中学校の数学で習う「相似図形」に着目すると簡単に解けます。同じ高さに見えるということは、見上げる角度(仰角)が等しいということです(下図参照)。ここで、地点P1から東京タワーを見上げたときにできる三角形P1ACと、東京スカイツリーを見上げたときにできる三角形P1BDは相似であることに気づきます。

すなわち、各辺の長さの比にP1A:P1B=AC:BDという関係が成立しています。同様に、仰角が等しい地点P2からも同じ高さに見え、三角形P2ACと三角形P2BDは相似であることから、P2A:P2B=AC:BDという関係が成立しています。
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すなわち、PA:PB=AC:BDという関係が成立するような地点Pから見れば、2つのタワーは同じ高さに見えるはずです。このような地点Pの集合は、P1P2を直径とする「アポロニウスの円」と呼ばれる円となります。20160702_3 このアポロニウスの円を地図に落としたものが下図です。東京スカイツリーと東京タワーを通る半直線Lとアポロニウスの円が交わる地点に東京工業大学があります。20160702_4 それでは、実際に東京工業大学の西8号館に行って確かめてみましょう。このとき注意したいのは、西8号館は半直線Lの南側にあることです。作図が正しければ、東京スカイツリーは東京タワーの右側に見えるはずです。20160702_5

どうでしょう?西8号館10階から見てみると、確かに同じ高さに見えますね! しかも、東京スカイツリーは右側に見えます!20160702_6

今度は、半直線Lよりも北側にある緑ヶ丘1号館から見てみましょう。今度は、東京スカイツリーは東京タワーの左側に見えるはずですね?20160702_7

どうでしょう?予想どおり、東京スカイツリーは左側に見えます!20160702_8

さらに、半直線Lへ接近して建っている緑が丘3号館から見てみましょう。20160702_9

予想どおり、2つのタワーは一層接近しました。ですが、何か変です!西8号館10階から見たときは同じ高さに見えましたが、緑が丘3号館4階からだと、東京スカイツリーの方が低く見えます。なぜでしょうか?20160702_10

視点の高さが影響?

どうやら見る位置(視点の高さ)が影響しているようです。10階と4階では、ずいぶん高さが違って見えるようですね。

ですが、また新しい疑問にぶつかります。見る位置が高くなると、手前にある東京タワーが低く見えてしまうはずです。下図に示すように、ここでも相似の関係を利用すれば、東京タワーは約18m低く見えることになります。

では、なぜ、西8号館10階から見たとき同じ高さに見えたのでしょうか?20160702_11

地球は丸い!

「地球は丸い!」ということを思い出せば、容易に理解できます。これも中学校の数学で習う「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」を使えば簡単に説明できます。

水平線の向こうから大きな帆船が近づいて来ることをイメージしましょう。船体は隠れたままで、マストの先端から見え始めます。下図で、帆船までの距離をd、隠れている部分の高さをx、また、地球の半径をrで表します。このとき、ピタゴラスの定理(三平方の定理)を用いて、xについて解くと、隠れて見えない部分の高さxは、地球の半径rと帆船までの距離dから簡単に求めることができます。20160702_12

この式に、地球の半径rと東京工業大学からタワーまでの距離dをそれぞれ代入してみると、東京タワーは約6m、東京スカイツリーは約23m、足元が隠れて実際より低く見えます。西8号館10階から見ると、これに「視点の高さ」による影響(約16m)が加わり、東京タワーは約22m(=6m+16m)低く見えます【注】
すなわち、西8号館10階から2つのタワーが同じ高さに見えたのは、「視点の高さ」と「地球は丸い」ことの影響が、うまくキャンセルされたためであることが分かります。20160702_13

おわりに

普段、わたしたちは地球が丸いことなど意識せずに生活しています。しかし、広領域の空間情報を扱う際には、決して無視できない重要な事実であることが分かります。都市的なスケールで世の中を見渡してみると、普段は見過ごしている興味深い事実に遭遇するかも知れません。是非、試してみてください!

【注】ここでは簡潔に説明するため、各地点の標高(西8号館:24m、東京タワー:8m、東京スカイツリー:1m)を無視して計算しています。ですが、標高差を考慮して、より厳密に計算しても、西8号館10階からの見かけ上の高さの差は同程度に小さな値となります。


執筆者ご紹介

大佛俊泰(おさらぎとしひろ)様
東京工業大学 環境・社会理工学院 建築学系 教授
(略歴)
1988年 東京工業大学工学部 助手、1993年 東京工業大学工学部 助教授、2007年 東京工業大学大学院情報理工学研究科 准教授、2011年より現職。専門分野;建築計画学、都市計画学、地理情報科学、情報環境学
大規模な時空間データベースと数理モデルを活用し、都市・地域・人間行動に潜在する法則を研究。近年は、首都直下大地震を想定した地域防災計画のための基礎研究として、徒歩帰宅行動や広域避難行動などに関する数値シュミュレーション分析を行っている。