MMSによる道路の3Dモデル構築とその応用

標準

2016年3月17日


今回は、道路施設調査、路面性状調査、安全点検をはじめ、さまざまな道路維持管理業務に応用可能なMMS(モービルマッピングシステム)についてご紹介します。

MMSとは?

MMS(Mobile Mapping System=モービルマッピングシステム)とは、各種計測機器を車両に搭載し、道路を通常走行しながらレーザスキャンする車載型移動計測システムのことをいいます。道路や道路周辺の広範囲において色の付いた点群を取得し、すばやく正確に計測できるため、さまざまな分野の業務への活用が期待されています。

MMSにおける車載機器

MMSに搭載される機器の一例をご紹介します。
・GNSSアンテナ
・上面/下面レーザスキャナ
・IMU(慣性計測装置)
・オドメータ(走行距離計)
・前方用/路面用カメラ
上記のような機器を車両に搭載し、自分の位置や姿勢などを測りながらレーザスキャンしていきます。
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MMS内部でのデータ処理方法

20160316_2車両搭載のレーザスキャナで計測して得られる座標は相対座標だけなので、この情報にGNSSアンテナとIMUで取得した絶対座標と姿勢情報を統合し、計測点の絶対座標を求めます。その後、カメラで撮影した画像情報を加え、色付き点群を大量に生成していきます。

下図はMMSで得た色付き点群の例ですが、膨大な数の点によりシーンが構成されています。
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点群の課題

MMSではスピーディかつ正確に大量の色付き点群データを取得できるのですが、その一方で、点群には以下のような課題があります。
・シーンとして見た場合、リアリティに乏しい
・向こう側が透けて見えるなど、遮蔽の概念がない
・点群は雲のような状態なので、シーンを切っても断面が得られない

実際の道路関連業務では、道路の断面図を最終成果物として納品するため、点群から3Dモデルを作成したいというニーズが非常に高いわけです。したがって、点群から3Dモデルを作成する場合、どこかのプロセスで点群データを面に変換する作業が必要になってきます。

従来の変換作業

20160316_4従来は、点群の必要な部分だけを切り出し、その部分データを各種のCADソフトを使ってポリゴン分割(半自動処理)した結果3次元の面データを作成する、という流れで変換作業を行っていました。

しかし、MMSで取得した点群は数千万~億という膨大な数であるため、その中から必要な部分だけを切り出すのに大変な手間がかかっていました。さらに、雲のような点群にどのように面を張ったらよいのかという問題もありました。

このように、MMSで測ったデータから欲しい場所の面データを即座に生成することはできないため、せっかく取得したMMSデータも従来の方法では活用し難いという課題がありました。

MoMoSとは?

MoMoS(Mobile Motion System=モモス)とは、前述のような経緯を受け、「好きな場所に面を張ってすぐに見たい」というニーズに応えるために開発されたソフトウェアです。2009年8月に開発に着手したのち、特許出願、登録を経て製品化に至りました。

MoMoSの特長

シーンに高速に面を張りたい

MMSはレーザスキャンしながら走行していますので、点群データはレーザスキャン単位で塊となっています。したがって、まずその単位ごとに整理する処理が必要となります。次に、レーザスキャン単位に整理された点群データを高速に検索可能な状態で保持して管理します。最後に、そのデータを取り出して分割し、面を張っていきます。この部分の作業を膨大な回数繰り返していきます。

■面を張るまでの処理プロセス
1. 点群データをレーザスキャン単位に整理
2. 高速に検索可能な状態で管理
3. 2本のスキャンを取り出して分割し、面を生成
20160316_5MoMoSでは、3番目の工程にあたる局所処理の繰り返しにより全体を描いていくため、全体のデータ量に左右されにくいという特長があります。

左下は従来の点表示のシーン、右下は面を張ったシーンです。右下の画像では、手前と奥行きが表現されており、また、向こうが透けて見えるという問題も解消されています。左右いずれの画像も元データは同一ですが、面を張っただけで奥行きのあるリアルなシーンが得られるのです。
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好きな場所をすぐに見たい

面を張ったあとで好きな場所をすぐに見たいというニーズもあります。MMSは走りながら走行軌跡のデータを残していきます。走行軌跡は粗い折れ線ですが、時刻と空間座標が含まれているので、時刻と空間をうまく結びつけるヒントになります。レーザスキャンで得た点群は、走行軌跡の周りに沿うようにデータが存在しています。したがってこのデータの一部分をCGとして画面に描く場合、視野の部分だけを描けばよいのですが、そのデータの抽出自体が大変なので、ここにジレンマがあります。

そこで先ほどの走行軌跡を使って、走行軌跡が視野に入る部分(t1)、出る部分(t2)、また入る部分(t3)、また出る部分(t4)を調べていくと、その場所に対する時刻がわかります。データは時刻順に並んでいるので、単純にこの時刻のデータのCGを描こうかなというふうにすれば、必要なデータだけをスピーディに抽出することが可能になります。
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MoMoSの主な機能

MoMoSの各種機能をご紹介します。

1. 点群を高速に面表示できる

シーンに面を張るとリアルに見えてきます。そもそもCGでは、あえて元の色を使う必要はなく、たとえば下図のように擬似的にシェーディングすると最初は見えていなかった凹凸が見えてきます。
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2. 面を張ると断面が出せる

例えば、トンネルに対して面を張ることができたら、面を張った筒のような状態のものをバサッと切ってみます。すると、その切った断面にはきれいな切れ目の線データが見られます。下図は、2つの線が重なっています。1つは、トンネルの中に入ってレーザが断面を測るという従来の測量方法によるデータです(青線)。もう1つはMoMoSの出力で、MMSでトンネル内を走行して集めたデータを持ち帰り、デスクトップで重ねて張った断面です(赤線)。

トンネル測量では、従来の方法だと通行止めをする場合が多いのですが、MoMoSを使った方法だと通行止めをせず従来と遜色ない精度のデータを得られ、それをデスクトップで可視化でき、どの部分でもいくらでも断面データを得られるのが特長です。
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3. DXF形式などで断面形状を出力できる

下図は実際の断面形状の取得例です。黄色い線が断面形状で、この部分をDXF形式などの外部ファイルに書き出し、CADソフトに取り込んで使うことができます。20160316_10

4. 視距を自動判定できる

視距を自動判定できるのもMoMoSの特長の1つです。
視距とは、道路上1.2mの高さから走行車線前方の高さ10cmの物体の頂点を見通せる距離のことをいいます。道路構造令上、設計速度に対する視距は決まっていて、例えば設計速度40km/hを60km/hに変更したいというようなことが往々にしてあります。こういった場合、従来であれば道路図面上で視距が満たされるかどうかを逐一測り直すのですが、何十kmとなると人手では実質不可能なので、それを自動化して欲しいという要望に応えてMoMoSに視距の自動判定機能を搭載しました。
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下図は視距の自動判定中の図ですが、視距の指標が車の前方をずっと逃げていきます。道路のカーブがきついとこの指標が隠れて見えなくなり、見えなくなると下の判定結果に赤い帯が表示される仕組みになっています。この判定結果はCSV出力できますので、一回MMSで走れば、視距が満たされていない部分(道路改修を必要とする部分)が判るわけです。
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5. 補修必要箇所の情報を集約して表示できる

視距だけでなく、わだち掘れや縦断凹凸といった補修必要箇所も、実際には正式な測り方がありますが、MoMoSを使えば一度に情報を集約して表示できるため大変便利です。
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6. 道路台帳平面図の新旧を比較する

これは、MoMoSの中の中核的な部分を取り出して作成した別ソフト(MoMoSファミリー)の機能です。データを平行投影して地図のような画像を作る機能です。点のままでも作成できますが、点のままだと上下のあたりの密度が低くなったり隙間ができたりするため、面を張ったほうがきれいな図ができます。この機能を使えば、こういった図を簡単に作成できるので、古い道路台帳平面図と比較し、更新状況を確認することができます。
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7. GISと連携できる

GISと連携できるため、MoMoSで詳細な場所を表示することができます。例えば、任意の箇所の座標値や寸法計測、横断図の出力が可能です。

以下はSISをベースに構築されたGISの画面です。これにMMSで走行した軌跡を重ね合わせてみます。赤い軌跡の部分に含まれているさまざまな情報をMoMoS側で調べ、気になった画面部分でストップして断面を切り、DXF形式で書き出してCADソフトでさらに詳細にソートする、という作業フローが可能になります。まさに鷹の目から蟻の目まで、自由自在な目で情報を眺めることができます。
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今後の展開

今後は、GISとの連携をますます強化していきたいと思っています。また、Webブラウザから指定のURLにアクセスするだけでMoMoSが使えるようにクラウド対応にしたいと思っています。(既に試作はできています。)また、各種のMMSが出てきているので、さまざまなレーザに対応できればと思っています。

MoMoSの開発を通じて産学の橋渡しを行い、少しでもこの業界を盛り上げるお手伝いができればと思っています。


【記事について】
本コラム記事は、空間情報シンポジウム2015大阪会場に登壇された島田英之様のご講演「MMS による道路の3Dモデル構築とその応用」の内容を、ご本人の承諾を得てインフォマティクスがまとめ直したものです。

本記事の元となるシンポジウム講演資料(pdf)をご覧になりたい方は、こちらよりダウンロードいただけます。
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・執筆者ご紹介
島田英之(しまだひでゆき)様
岡山理科大学 工学部情報工学科 教授
(略歴)
1966年香川県生まれ。1994年岡山理科大学工学研究科博士課程修了。岡山理科大学助手、講師、准教授を経て、現在、同大学工学部情報工学科 教授