人と星とともにある数学 第3回

標準

2016年3月3日


第3回 sin31°物語 マクローリン展開との出会い


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sin31°の算出方法がわかった!?

高校2年生、ある数学の問題(いずれ連載で紹介)の解法を探していることがきっかけで「マクローリン展開」に出会うことになりました。この数式との出会いは衝撃的かつ大きな影響を与えるものでした。

まずは、結論を急ぎましょう。この数式を用いることで懸案であったsin31°の数値を計算してみます。マクローリン展開の式の特徴は多項式であることです。xのべき乗を階乗(!)で割った値を数項たし算(ひき算)すればいいので、すべての計算は四則で可能です。はたして、マクローリン展開はsin31°を0.515039とはじきだします。電卓の表示「0.515038074」と小数点以下5桁が合っているではありませんか。

この結果をもってして、私は電卓の中にプログラミングされているのはマクローリン展開ではないか、と考えるに到りました。

弧度法

三角関数のマクローリン展開の数式を用いる際に準備が必要です。角度を「°」から「rad(ラジアン)」に変換する計算 ── 弧度法です。xに31°を代入することはできないのです。なぜわざわざ角のひらき具合である角度を「°」ではなく「rad」を用いる必要があるのでしょうか。

1°は1周を360分割した量、すなわち360°が1回転を表すように定義された量です。360という数値の起源は、1年=365日、すなわち地球の太陽の周りを回転する公転周期です。

1次関数y=xや2次関数y=x2のxとはどのような量なのかを考えることからはじめてみます。あきらかにx軸上原点からの「長さ」「距離」を表しています。角度という量もこのx2のxと同じように長さで表すとを考えるのです。

グラフで考えてみるならば、1次関数y=xや2次関数y=x2が描かれたところに、xを「°」にしたままで三角関数y=sin xのグラフを描くことができません。xが「長さ」「距離」を表していないからです。三角関数y=sin xのxを「長さ」「距離」として扱えるようにします。角の大きさの測り方を分度器から定規にすればいいのです。
20160302_3いま、わかりやすく半径を1[m]と長さの単位をつけて表しておきます。1周の長さは、直径×円周率=2π[m]なので、次の関係がわかります。

1周:360° ↔ 2π[m]

同様にして次のような計算もできます。

半周:180° ↔ π[m] 4分の1周:90° ↔ π/2 [m]

これから、360°の代わりに2π、180°の代わりにπ、90°の代わりにπ/2を用いることできます。このような、角の大きさを単位円(半径1の円)の弧の長さに置き換えるという考え方を「弧度法」、角の単位を[rad]と呼びます。したがって、次のような関係になります。

360° ↔ 2π[rad] 180° ↔ π[rad] 90° ↔ π/2 [rad]

この弧度法のおかげで、三角比は晴れてめでたく三角関数へと変身します。その最大の恩恵こそ微分法が適応されることです。マクローリン展開は与えられた関数を微分することで得られます。
20160302_231°をradに変換してみましょう。2π[rad]=360°の関係から、1[rad]=(360/2π)°=約57.3° または、1°=(2π/360)[rad]= 0.01745328…[rad]とわかります。したがって、次のように計算されます。

31°=0.01745328…× 31[rad]≒0.541052[rad]

この値をマクローリン展開の式のxに代入して、sin31°が計算できます。


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執筆者ご紹介  桜井進(さくらいすすむ)様
1968年山形県生まれ。
サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役。
(略歴)
東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。東京理科大学大学院、日本大学芸術学部非常勤講師。
理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。
2000年、日本初のサイエンスナビゲーターとして数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。
東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。