時空の旅 ~空間と時間と人間~ 第5回

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2013年2月26日


今回は、私たちの周りに当たり前のように存在する「色」の世界に旅してみましょう!

第5回 たかが色、されど効果は・・!

W・a・t・e・r・・・

流水を手に受けながら、サリバン先生が掌に書き続けた文字「water」との関係に気づき、ヘレンケラーが、自分のいる空間にあるモノの存在と、それらすべてには名前がある、ということを知る瞬間。

この時を境に、ヘレンケラーは「自分以外の存在」への興味と関心を持ち、知識欲が外に開かれ、たぐいまれな理解力と才能によって、あらゆる情報を吸収していきます。私も幼いころ伝記を読み、ヘレンケラーがどうやって、見えないし聞こえないものを自分の中で形作っていったのか、サリバン先生の地道な努力と愛情とともに驚嘆し、感動を覚えました。

しかし色はどうやって説明するのだろう?特にヘレンケラーのように、ごく幼い時に視力を失った人に。形や硬さ、重さは説明したり、触ったり持ったりすることで定義でき共有できる。しかし色はどうやって説明するんだろう、と疑問に思っていました。そのせいか、夕焼けを見て「きれいな茜色!」と言いながら、自分が見えている「赤色」は、人が見えている「赤色」と本当に同じ色なのだろうかと考えることもありました。

大人になった今は、それぞれが「赤色だ」と思うものを持ち寄って波長分析すれば、同じものであることを証明できるのだということを知っています。

色の違いは波長の違い。波長の違いは・・?

色の違いとは「波長」の違いです。そして波長が違うということは、それが周りに及ぼす影響も違うはず。そうです。私たちは、気が付かないうちに空間に存在する色の違い、つまり波長の違いによって、精神的にも心理的にも体調的にも影響を受けています。色を見ることによって、血圧が上がったり下がったり。気持ちが高揚したり落ち着いたり。このメカニズムは「色彩心理学」などで科学的に解明されつつあります。

赤や青の、単なるイメージからくるものではなく、赤色の波長は610~780nmと長く、青色の波長は430~460nmという物理的な違いから、それぞれが人間の自律神経に働きかける作用も異なるのかもしれません。

たとえば、赤は興奮や覚醒を呼び起こすといわれています。闘牛士が赤い布を振っているのは、牛ではなく、闘牛士自身の気持ちを高め、鼓舞しているのかもしれません。ビジネスの世界でも赤は販売色カラーと呼ばれており、私も客先プレゼンなどある日には赤いものを身に着けます。自分もやる気になるし、相手にも前向きになって欲しいからです。逆に、青は緊張や興奮を沈静化するといわれています。実際に、街路灯を青色LEDにしたら、その町の犯罪が減ったという報告が新聞にも載っていました。

また、色には人間の目に見える色(可視光線)と見えない色(紫外線、赤外線)があります。紫外線や赤外線は見えなくても、実際に様々な影響を与えています。しかも人間は色を外から受け取るだけでなく、自ら発している色もあるそうです。一部の人には見えるという、人が発する「オーラ」。これには色があるそうです。その人がいるだけで明るくなるとか、緊張感が増すなどというのは、単なる思い込みや雰囲気だけでなく、その人の発するオーラの色のせいかもしれません。

認知するとしないとにかかわらず、「色」によって人間の身体や心理に変化が起こり、その場の雰囲気が変わってくるというのは、非常に興味深いと思いませんか。

イタリアの大理石は天然着色

イタリアのウンブリア州にあるアッシジは「平和の町」と呼ばれ、そこに住む人も、訪れた観光客も、平和な雰囲気に浸ることができます。その理由は建物の色にあります。アッシジで採取される大理石はピンク色なので、ほとんどの建物が薄いピンク色をしています。そのため町全体が、柔らかく優しい雰囲気を醸し出しているのです。こんな色に囲まれて過ごす人々は、自然に心穏やかで平和を愛する気持ちになるのでしょう。

アッシジの街外観 アッシジにあるサンタ・キアラ聖堂
アッシジの街外観(クリックで拡大表示) アッシジにあるサンタ・キアラ聖堂(クリックで拡大表示)

一方、トスカーナ州フィレンツェで採れる大理石は緑色。緑は精神の安定とともに、元気を与えてくれる色。商人の町にふさわしく、活気のある雰囲気を醸し出しています。

フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオーモ)

フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオーモ)(クリックで拡大表示)
緑色に見えるのは着色したものではなく、天然の大理石の色。ピンク色はウンブリア州産の大理石だそうです。

色。
あまりにも自然にそこにあるので、普段はその意味を深く考えたりしませんが、色にはそれぞれ意味があり、及ぼす効果もあなどれません。空間を決定づける大切な要素の一つなのです。色を軽んじてはいけません。

毎朝、手に取る洋服の色にも、その時々のシチュエーションや心理状態が表れています。今日は何となく黄色い洋服が着たいと思った貴方、体調バッチリで気持ちも開放的なのかもしれません。茶色で決めたいと思った貴方、少しペースを落として堅実に物事を進めていく日かも。オレンジ?今日は楽しいことがあるのかな・・?

販売戦略やマーケティングなどビジネスにも、デートの雰囲気作りにも、赤ちゃんの安らかな眠りにも。色のもたらす効果は計り知れないものがあり、その影響を知っているのと知らないのとでは、おのずと結果に違いが出ます。アメリカ大統領も、色によるイメージ戦略をとっているといいますね。

さあ、色を身に着けてお出かけ!

今朝も玄関の鏡で服と靴の色をチェック。うん、コーディネートよし。勝負の日だから赤いスカーフを忘れずに。信号は青になったら渡りましょう。お、緑の山手線が来た。黄色の線までお下がりください。あ~、今日も青空がきれい。お弁当の彩りも「白、茶、赤、黄、緑」でばっちり。よし、頑張って出勤だ!


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