クラウド技術は、今日のビジネス環境においてますます重要な役割を果たしており、従来のオンプレミス型のITインフラに比べて、クラウドを利用することで多くのメリットを得ることができます。
今回はクラウドの仕組みや種類、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
クラウドとは
クラウドとは「クラウドコンピューティング」の略で、コンピュータネットワーク、特にインターネットの利用形態を意味する言葉として使われています。
基本的に業務システムやサーバーなどを自社で運用・管理しない形態のため、よりスムーズかつ低コストで導入・運用が可能になります。
ソフトウェア利用形態|従来型とクラウド型の違い
従来型
従来型の利用形態では、ソフトウェアを使う場合、CD-ROMあるいはインターネットからソフトウェアをダウンロードしてPCにインストールする必要があります。
ライセンスの形態にもよりますが、基本的にソフトウェアはインストールしたPC以外では利用できません。
クラウド型
クラウド型の利用形態では、インターネット上にあるソフトウェアをネットワーク経由で使うため、ブラウザ(Google Chrome、Microsoft Edge、Safariなど)が使える環境さえあれば、いつでもどこからでも利用できます。
この形態で提供されるサービスのことを「クラウドサービス」といいます。
なおクラウドという言葉は、米Google社 エリック・シュミット氏の発言(2006年)に由来するといわれていますが、技術者がネットワーク図を雲の絵で表わすことに由来するという説もあります。
クラウドサービスの例
クラウドサービスの身近な例としては、Webメール(Gmail、hotmailなど)やSNS(Twitter、Facebookなど)が挙げられるでしょう。
アドレス帳やメールデータ、コメントや写真がすべてインターネット上に保存され、メールの送受信やSNSの投稿もインターネット上のアプリケーション経由で行われます。
そのほか、以下のようにさまざまな業務に利用されるクラウドサービスが提供されています。
- Web会議
- グループウェア
- 名刺管理ツール
- 勤怠管理システム
- MA(マーケティングオートメーション)
- SFA(営業管理システム)
- CRM (顧客管理システム)
- 在庫管理
クラウドサービスを使えば、いつでもどこからでもデータの閲覧や編集、アップロード・ダウンロードが可能になります。
クラウドサービスの種類
クラウドサービスにはいくつかの種類があります。
ここからはクラウド環境を提供するサービスプロバイダや、サービスを借りる(導入する)企業内のシステム管理者(IT担当者)寄りの内容となります。
クラウドコンピューティングは、構築する上で様々な要素が必要となります。
- サービスを提供するソフトウェア
- ソフトウェアを動かすためのOS
- OSが稼動するためのサーバ
- サーバを相互に接続するネットワーク
これらの要素のうち、どこまで借り手(導入)側が管理・運営するかで利用形態が決まります。
クラウドサービスには以下の種類があり、総称して「XaaS」と呼ばれます。
- SaaS(サース:Software as a Service)
- PaaS(パース:Platform as a Service)
- HaaS/IaaS(ハース:Hardware as a Service/イアース:Infrastructure as a Service)
SaaS(Software as a Service)
SaaSは、ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービスです。
ユーザーは自分でソフトウェアをインストールする必要がなく、ブラウザ経由でアクセスするだけで利用できます。(例:Googleドライブ、Salesforceなど)
ユーザーはソフトウェアの各種設定を行うことができ、多くの場合、ブラウザ経由で管理します。
PaaS (Platform as a Service)
PaaSは、アプリケーションを開発するためのプラットフォームを提供するサービスです。
ユーザーは、自分でサーバーを用意する必要がなく、プラットフォーム上でアプリケーションやデータベースを開発できます。(例:Microsoft Azureなど)
HaaS/IaaS(Hardware as a Service/Infrastruacture as a Service)
HaaS/IaaSは、インターネット経由でハードウェアやITインフラを提供するサービスです。
ユーザーは、自分でサーバーを用意する必要がなく、必要なスペックのサーバーをクラウド上でレンタルできます。(例:Amazon Web Services、Microsoft Azureなど)
ちなみに元々はHaaSという用語が考案されましたが、現在はより包括的な意味のIaaSが使われるようになってきています。
比較表
SaaS | PaaS | Haas / IaaS | オンプレミス |
データ | データ | データ | データ |
アプリケーション | アプリケーション | アプリケーション | アプリケーション |
ミドルウェア | ミドルウェア | ミドルウェア | ミドルウェア |
OS | OS | OS | OS |
サーバー/ストレージ/ネットワーク | サーバー/ストレージ/ネットワーク | サーバー/ストレージ/ネットワーク | サーバー/ストレージ/ネットワーク |
※グレーの背景:利用者側が管理、背景なし:提供事業者側が管理
利便性・管理の容易さでは「SaaS > PaaS > HaaS/IaaS > オンプレミス」の順になり、カスタマイズ性・自由度の高さでは「オンプレミス > HaaS/IaaS > PaaS > SaaS」の順になります。
導入のメリット・デメリット
クラウドサービスには、主に以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
- システム構築やソフトウェア・ハードウェア購入が不要のため、初期導入や保守にかかる費用を抑えられる。
- 必要な分だけリソースをレンタルする従量制課金形態なので無駄なコストを抑えられる。
- 必要に応じてサーバーの台数やスペックを自由に変更できるため、利用者数の増減にも柔軟に対応できる。
- スケールアップ・ダウンを自動化することで、運用の負荷を軽減できる。
- システム担当者による維持管理の負担を軽減できる。
デメリット
- システムのカスタマイズが困難である。
- サービスが常に安定的、永続的に提供されるとは限らない。(提供側の都合によりサービスが停止する場合がある。)
- セキュリティ面で不安がある。
オンプレミスとの違い|設置・運用
ひと口にクラウドといっても、サーバーの設置場所や運用方法により以下のような違いがあります。
パブリッククラウド | インターネット上でサービス公開されている場合が多い。利用者はいつでもどこからでもサービス利用できる。
主なメリット:
|
オンプレミス (プライベートクラウド) |
広域イーサネット環境、インターネット回線上のVPN接続された環境など、限られたネットワークのみでサービスを公開。利用者は組織内の特定PC以外からは利用できない。
主なメリット:
|
ハイブリッドクラウド | 上記2つを組み合わせたもの |
おわりに
自社内での管理・運用にかかるコストや人員負担の軽減、在宅・リモートワーク体制推進のため、オンプレミスからクラウド化を検討されている企業様も多いのではないでしょうか。
オンプレミスもクラウドも、それぞれメリット・デメリットがあります。
クラウドサービスの導入にあたっては、上述の内容を踏まえ、自社に合った適切な製品・サービスを選ぶことが大事です。
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<参考>
『イラスト図解式 この一冊で全部わかるクラウドの基本』(SBクリエイティブ/林雅之著)