My story ~空間情報と歩んだ40年~ (2)

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2015年8月3日


インフォマティクス 長島会長によるコラム第2回です。

OXSYS(オクシス)との出会い

東京大学からMIT(アメリカ)に渡ってNegroponte教授と出会い、Architecture MachineGroup(AMG)に移籍し、そこで論文を書く決心をした年(1975年)の夏休み、別の出会いがありました。この夏休み期間にAMGは、有名企業を招いてハードウェアやソフトウェアの最先端技術を紹介する講習会(サマーセッション)を開催しました。このサマーセッションは、外部参加者の場合は結構な値段の参加費用がかかりますが、AMGの一員となった私は、主催者側スタッフとして無料で参加できました。

サマーセッションでは、当時アメリカで一番の超高層ビル、シカゴのSears Tower(1973年完成。現在はWillis Towerに名称変更)の内装設計をCADシステムで行った事例発表を聴講。さらに、当時まだ実用化前だったフラットタイプのプラズマ・ディスプレイも初めて見ることができました。そのプラズマ・ディスプレイはネオンガス放電によるオレンジ単色のものではありましたが、とても驚いたことを覚えています。

サマーセッションでは、「OXSYS(オクシス)」というCADシステムの発表を見る機会もありました。OXSYSは、OxfordのSystemを由来としたシステム名です。英国のOxford地方では、大戦後の医療施設不足を解消するために、プレファブ構法を採用して効率的に病院・診療所の建設を行っており、その設計を支援するCADシステムがOXSYSでした。OXSYSを使用した効率的な医療施設設計はOxford Methodと呼ばれ、これを発表したのが、たまたま夏休みでボストン(アメリカ)に帰省中だったJohn Gibbons氏でした。

Oxford Methodは、システムズビルディングの手法とコンピュータを連携させて設計する手法。まさに私が思い描いていた建築とコンピュータの組み合わせそのものでした。その秋以降、AMGで修士論文のためのプロジェクトに注力し、毎日午後6時~夜中までコンピュータを使いました。そして、プロジェクトの成果も段々と認められるようになり、ティーチングアシスタントとして奨学金も支給されるようになりました。

年明け(1976年)1月、どうしてもOXSYSの開発現場を見学したいと思い、Independent Activities Period (IAP)という興味を持った活動に自由に時間を費やせる期間を利用して英国に行きました。英国滞在中は、Oxford Methodを開発しているOxford Regional Health Authority (ORHA:地域厚生局)のほか、CADシステムを開発している団体や実務にCADを利用し始めている団体をいくつか訪問しました。ORHAでは、コンピュータで医療施設の設計を行っていました。

ORHAでのミーティング中、期せずしてOXSYSを開発しているApplied Research of Cambridge Limited(ARC)(1969年設立)のChairman、Edward Hoskins氏に遭遇しました。彼は「君はCADを使うことに興味あるのか?それともCADを作ることに興味があるのか?」と質問されました。私が「CADを開発することに興味がある」と答えたのを聞いて「CambridgeのARC社にCADを見に行ってはどうですか。ところで、Cambridgeを訪れる予定はあるのですか?」という質問が返ってきました。当初その予定はなかったので、そう返事すると、「Oxfordを見てCambridgeを見ないまま英国を離れてはダメ」と言われました。そこで、予定を変更し、日曜日夜Cambridgeに泊まり、翌朝ARC社を訪れることにしました。

Oxfordと比べてCambridgeはコンパクトな街。Cambridge大学の門が並んでおり、まるで中世の騎士が出てきそうな雰囲気でした。 翌朝、予定通りARC社を訪れ、OXSYSのシステムの詳細な説明や、実際のシステムを見せてもらい、大変大きな感動を覚えました。 もちろん、MITでもコンピュータを使ってCADシステムを開発しているのですが、ARC社で開発しているOXSYSは、既に実際の建築の設計に使用され始めていて、実際にそれを使った建築物の実績もありました。ARC社は、Cambridge大学の研究者が1969年に設立した、社員10人程度の今でいうベンチャー。大学の研究室と全く変わらない雰囲気でした。

左写真出典:"KingsCollegeChapelWest" by Andrew Dunn - http://www.andrewdunnphoto.com/.
Licensed under CC 表示-継承 2.0 via WikimediaCommons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:KingsCollegeChapelWest.jpg
#mediaviewer/File:KingsCollegeChapelWest.jpg

イギリスを訪問時に私が作成したレポートは、MITの研究室のニュースレターに掲載されています。

“MAS VISITS ENGLAND January 25,1976 Early this month I went to
England and stayed for a week.…(OXSYSを見て) So this new building
system allows us to design buildings more flexibly and to arrange the interior of the buildings more clearly. … I was impressed by what they are doing in England” ※MAS(マス:私(長島)のあだ名)

イギリスでの体験がいかに大変印象深く心躍るものだったか、当時のレポートから伝わってきます。MITに戻り、卒業後のことを考えた時、やはりARC社で働きたいという気持ちが強くなりました。OxfordでHoskins氏と出会わなければ、Cambridgeに行くこともなかったし、ましてやARC社との出会いもなく、現在の「インフォマティクス」という会社も存在していなかったかもしれません。


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第三回 英国ARC社での就職に向けて
第四回 OXSYSの特長と難点
第五回 日本で会社を設立
第六回 CADからGISへ